最終ジャッジが正しくても、当初判定とのギャップが大きいと説得力は減る。(J1第25節)
J1リーグ第25節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。
Referee Topics
ペトロヴィッチの怒りは
正当な面と不当な面がある。
川崎F vs 札幌
(主審:岡部拓人 VAR:上村篤史)
51分、裏に抜け出しかけたマルシーニョが岡村のスライディングを受けて転倒。当初はノーファウル判定もVARが介入し、OFR(オン・フィールド・レビュー)の末、一転して岡村がDOGSO(決定機阻止)で一発退場となった。
まず、ファウルかどうかという点では、岡村のスライディングの前にマルシーニョが僅かにボールに触っており、岡村はボールに触れることができていない。マルシーニョがプレーを続けようとしたためアドバンテージを適用する判断はありえたが、結局すぐにバランスを崩して倒れたので、その時点でロールバックしてファウルを採るべきだろう。
そして、ファウルが起こった瞬間で映像を止めてみると、マルシーニョよりもゴールに近い守備者はおらず、ゴールとの距離・プレーの方向・ボールをコントロールできる可能性についてもDOGSOの要件を満たしている。初見だと守備側の戻りが間に合っているように感じるが、映像を止めて確認するとかなり印象は異なり、マルシーニョの前進を阻む者はいない。
よって、当初判定がノーファウルだったので最終ジャッジとのギャップが大きくなったもののの、結論として「DOGSOで一発退場」という最終ジャッジは妥当だと言える。岡部主審としては、川崎の速攻に対して若干出遅れてしまい、センターサークル付近のやや遠い位置での見極めとなった。そもそも遠い位置だったうえに、事象と自身との間に複数の選手が入ってしまったこともあり、岡村がボールに触れたかどうかを正しく見極めきれなかったと考えられる。
なお、上記シーンについては札幌のペトロヴィッチ監督が不満の意を示している。最終ジャッジは一定の妥当性があると思うが、当初ノーファウルとした岡部主審の判定はいわゆる「誤審」に近いものであり、その当初判定が一転しての退場という判定プロセスも含めて不満を持つのは自然な感情だろう。試合後のやり取りを含め、審判団として大きな課題を抱えた一戦であった。
※なお、DAZNフルマッチ映像2:24:25あたりの映像を見ると、審判と握手をかわしながらのペトロヴィッチ監督の拍手は、サポーターに同調したものではなく審判団への皮肉を込めたものであるようには感じた。(個人的な感想ではあるが)
京都 vs 福岡
(主審:小屋幸栄 VAR:川俣秀)
36分、金森に対するスライディングでアピアタウィアが一発退場。VARも介入せず、レッドカードでジャッジ確定となった。
アピアタウィアのボールタッチが長くなったところに金森が先に体を入れ、そこにスライディングで遅れて突っ込んだ形だ。勢いはかなり強かったのでイエローカードは最低ラインで、イエローかレッドかの判断は接触部位がポイントとなる。
伸ばした左足の足裏は上がっているが、金森に接触したのは足裏ではないように見える。一方で、大きく振った右足のほうは、金森の立ち足となった左足を強く払うような形となっており、両足で金森の左足をやや挟むようになったことも含め、負傷のリスクが非常に高い行為となってしまった。
個人の見解としては、足裏がクリティカルヒットしたわけではないので、「真っ赤」ではないが「赤に近いオレンジ」くらいの印象だ。イエロー+厳重注意で留める判断もありえたとは思うが、小屋主審の判断は十分に受け入れられるし、VARが介入しなかったのも妥当性がある。
FC東京 vs 神戸
(主審:中村太 副審2:道山悟至 VAR:荒木友輔)
64分、長友のクロスが本多の左腕に当たるも当初はノーファウル。ここでVARが介入し、OFRの末にPK判定となった。クロスブロックのシーンで、胴体から腕がやや離れて広がっている…となると、ボールが腕に当たればハンドになるのはもはや自明。被カウンターの場面で慌てて戻ったとはいえ、本多としては軽率な対応であった。
なお、該当シーンは、主審の角度だと腕が選手自身の体で隠れがちで見極めは難しい。見極めうるとしたらA2だが、奥のオフサイドラインも見ながら…ということで、焦点を合わせきれなかったか。
つづいて87分には、エリア内でパトリッキと野澤が交錯するも、こちらも当初はノーファウル。ここで本日2度目のOFRが行われ、PK判定となった。
こちらは野澤がボールに飛び込む前にパトリッキがボールに触っており、結果的に野澤がボールに触れなかったことは比較的明瞭に見極めが可能で、当初判定がなぜノーファウルだったのかが不可解なレベルであった。最終ジャッジに異論はないが、中村主審の当初判定の理由が気になるところだ。
鹿島 vs 新潟
(主審:御厨隆文 VAR:池内明彦)
33分、鈴木優磨がヘディングでゴールネットを揺らすも、GK小島に対するファウルの判定。鈴木にはイエローカードが提示された。
リプレイ映像をスローで見ると、小島のキャッチと鈴木優磨のヘディングだと前者のほうが僅かに先に見える。GKが捕球したところにチャレンジするのは認められないので、ファウル判定自体は妥当で、この点に関するVAR介入はなしえない。
一方で鈴木優磨の競り合い方は「無謀」なものと捉えるのはやや厳しいか。走りこんでのヘディングだったため勢いが付くのはやむを得ず、結果的に小島側のダメージがやや大きくなったものの、安全への配慮をことさらに欠いていたわけではない。イエローカードはナシでもよかったと感じた。
各試合の講評
堅守速攻の軸ができた横浜FC。
5バック移行で光明が。
横浜FC vs 横浜FM
横浜ダービーは終わってみれば横浜FCが4ゴールで大勝。マリノスのハイラインに対して、ロングカウンターがことごとく決まり、4ゴール以上の決定機を作りつつの勝利となった。カウンターを牽引したのは韋駄天の山下だが、好機と見るや縦方向に推進力を発揮した中盤より後ろの選手もお見事。終了間際にDFの吉野が決めたゴールは、チームとしての積極性の象徴であった。
4バック時代は攻守にチグハグな印象があったが、5-2-2-1のシステムを採用してからは「粘り強く守ってカウンター」という狙いが明確になり、チームとしての戦いにも一貫性が出てきている。
時間帯によっては前線からのプレッシングを見せる場面もあるが、この試合でもマリノスのパスワークにいなされて逆にカウンターを食らうことが多く、前進しての守備は継続課題の1つだ。特にビハインドを背負った場合の振る舞いは改善すべき点が多い。ストッパータイプが揃う守備陣を考慮するとハイラインは得策ではないので、2トップ気味にしたりウィングバックの1枚を攻撃的な選手に代えたりなど、バランスを維持しつつも攻撃力を強化する策が必要になりそうだ。
一方のマリノスはよもやの大量失点で敗戦。もともと層が薄めの最終ラインは畠中の長期離脱が確定し、厳しいやり繰りとなっている。ハイライン戦術を志向するため守備陣の負担は大きく、駒が豊富な攻撃陣と違ってローテーションを回せないこともあり、連戦だとパフォーマンスが落ちやすいのが課題だ。時間帯によってはある程度ラインを下げてバランスを重視する現実策も必要になるかもしれない。
柏 vs 広島
前節久々の勝利を飾ったサンフレッチェは、勝利の立役者となったマルコス・ジュニオール、加藤、満田を同時起用。野津田の出場停止もあり、川村をアンカーに置き、満田とマルコスをシャドーに並べ、加藤とピエロス・ソティリウを2トップ気味に配置する攻撃的な布陣で臨んだ。
結果的にはスコアレスとなったが、レイソルの体を張った守備に阻まれた部分が多く、多くの決定機を生み出したという点で戦術的には正解だったと言えよう。攻撃の厚みが増える分、被カウンターのリスクが高まるという点は予想通りで、押し切って勝利するシナリオも、カウンター一発を仕留められて敗戦の可能性もあった。
個人的には、バランスがとれた3-4-2-1でスタートし、同点またはビハインドの場面ではフレッシュな選手を投入しつつ3-3-2-2などで前に重心をかける…というジョーカー的な使い方のほうが効果的にも思える。
気づけば中位が定位置になっており、残り約10試合で3位とは勝ち点差が7。これ以上離されるとCL出場権が遠のくだけに、スキッベ監督としても正念場だ。
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