御厨貴文審判評:2枚のレッドカードはいずれも妥当。その他は難しい判定がてんこ盛り。(J1第8節)
J1第8節。浦和 vs 札幌の一戦を裁いた御厨貴文主審率いる審判団のジャッジを講評する。
浦和 vs 札幌
Referee:
御厨貴文
Assistant referees:
西橋勲
穴井千雅
Video Assistant:
木村博之
ユニフォームを引っ張っておりファウルはやむなし。ファウルであればレッドカードはやむなし。
まずは34分、興梠を倒した中村が一発退場となった。
最初に状況を確認すると、守備者は中村しかおらず、ゴール正面でGKとの1対1に持ち込める場面だった。興梠はボールをコントロールしてゴールに進んでおり、状況としてはDOGSOの要件を満たしている。つまり、論点は中村のプレーがファウルかどうかに絞られる。
では接触自体を見てみると、中村は興梠のユニフォームを引っ張っているのが確認できる。そこまで強い力が加わっているようには思えないものの、ホールディングに関しては程度ではなくそれ(相手競技者を押さえる)自体が反則なので、ファウルを採られても致し方ない。
ユニフォームを引っ張られたことを認識した興梠が意図的に倒れた印象は若干残るものの、ドリブルでかわされかけたところで手が出た中村の印象は非常に悪く、ファウルを採った御厨主審の判定は十分な妥当性がある。
関根のゴール取り消しは妥当。その前の荒野のファウルを採るかどうかは…悩ましい。
続いて71分。関根がゴールネットを揺らすもVARが介入しOR(オンリー・レビュー)でオフサイドを採ってゴール取り消しとなった。
この場面では関根のゴールがオフサイドで取り消されたこと自体は議論の余地がないが、関根にボールが渡る前に荒野が興梠を後ろからド突いて倒しているように見える。このシーンだけを切り取ると荒野のファウルを採るべきだったと思うが、直後に関根が1対1でシュートを放っており、大半の主審はここでアドバンテージを適用するはずで、当初にファウルが採られなかったことに違和感はない。
しかし、関根のゴールが取り消しとなったことで、「ロールバックして荒野のファウルを採るべきか」という問題が生じてくる。
もし審判団のオリジナルジャッジがノーファウルだったとしたら、VARはこの事象には介入できないだろう。興梠はボールをコントロールしておらず、またプレー方向もゴールからやや外に向かっていた。レッドカードの可能性があるDOGSO案件ではないので、この事象はVARの介入対象外だ。
それでは、審判団のオリジナルジャッジがファウル(アドバンテージ適用)だったとしたらどうだろう。「審判団がアドバンテージを適用してゴールが入り、そのゴールをVARが取り消した」という場合は、私の把握する限りでは競技規則で言及されていないように思う。しかし、何をもってアドバンテージ(利益)を得たかという判断自体が非常に微妙なものであり、今回のけーーすでもORでオフサイドを採ったうえでアドバンテージを取り消してロールバックするという判定変更のプロセスは現実的ではないだろう。理屈上は可能かもしれないが、選手・監督・観衆ともに理解が難しく、現実的ではないと感じる。
長々と述べたがこのケースは非常に複雑であり、私の競技規則の理解が合っている自信も正直ないので、Jリーグジャッジリプレイなどで解説がなされることを期待したい。追加情報を入手次第、本記事も加筆修正することとしたい。
足裏が脛にヒット。御厨主審はポジション修正が遅れて見極めきれず?
続いて73分。バックパスに対してプレッシャーをかけたホセ・カンテがク・ソンユンと激しく接触。御厨主審は当初は家おろーカードを提示したが、VARレコメンドによりOFR(オン・フィールド・レビュー)を行い、レッドカードに判定を変更した。
リプレイ映像で見ると、ク・ソンユンがボールをキックした後、ホセ・カンテの足裏がク・ソンユンの脛あたりにがっつり入っている。もともとはキックをブロックするために出した足だとは思うが、結果的に足裏が高く上がった状態でヒットしており、骨折などのリスクも十分にある危険なプレーだ。レッドカードという判定はやむを得ない。
御厨主審としては、接触が起こった際に事象と自身の間にちょうど荒野がいるように見えるので、荒野と被って接触の程度や部位を見極めきれなかったか。ホセ・カンテが遅れてチャレンジしたことは確認したものの、足裏が接触したことは確認できずに警告を提示したと考えられる。長いVARチェックを経ての再開後最初のプレーであり集中力を維持するのは難しかったが、ポジション修正の一瞬の遅れで見極めが難しくなったか。
シュートブロックは「捨て身タックル」。リスクを伴う。
そして、79分。興梠のシュートが青木の腕に当たったシーンについて、当初はノーファウルという判定だったが、本日2回目のOFRの結果、ハンドを採ってPKという判定になった。
青木の左腕は胴体から離れて広がっており、体を大きくしているとみなされても仕方ないだろう。動作の上ではやむを得ない部分はあるが、体を投げ出してシュートブロックに入るという行為自体がいわゆる「捨て身タックル」であり、リスクを伴うプレーだ。体のどこかにボールが当たることを期待したプレーなので、サッカーが腕でボールを扱ってはいけないスポーツである以上、腕がその「バリア」を大きくしていたとすればハンドを採られるのはやむを得ない。
なお、このシーンのVARチェック中にチェック項目の表示は「PK確認中 - 攻撃側のハンドの可能性」となっていたが、このシーンでは攻撃側のハンドが疑われる事象はなかったはずで、「守備側のハンドの可能性」の誤りだと思われる。VARのチェック項目の表示は今季から導入されたが、誤表記が散見され、まだ試行錯誤の運用が続いていることが窺える。
本記事は参考情報として提供しており、内容の正確性・最新性について保証するものではありません。
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