個の力でスイスのゲームプランを粉砕。ゴンサロ・ラモスがロナウドに引導を渡す?(カタールW杯)
カタールW杯決勝トーナメント1回戦。ポルトガル vs スイスの一戦を講評する。
ポルトガル vs スイス
<Referee Topics>
ゴンサロ・ラモスに負けず劣らず。
安定感があったラモス主審。
Referee:
César Arturo Ramos (Mexico)
Assistant referees:
Alberto Morín (Mexico)
Miguel Hernández (Mexico)
Video Assistant:
Drew Fischer (Canada)
3分、ルイス・ディアスの肘がエムボロに入って倒れこむもノーファウル。意図的ではなかったとはいえファウルを採ってもよいかな…という印象だったが、ノーファウルでも受け入れられる範疇だろう。(結果論ではあるが、エムボロがすんなりと回復していたので実際にはそこまでの強度ではなかったのかもしれない)
前半19分、ボールを受けようとしたゴンサロ・ラモスがアカンジの後方からのチャージで倒れるもノーファウル。それより5分くらい前にエムボロが同様の倒れ方をしたときもノーファウルなので、基準は一貫している。もちろんどちらもファウルにする判断はありえたが、ラモス主審のタフな基準がブレていないのでそれはそれで問題ない。
20分、ぺぺに対してフロイラーがチャージしたシーンは、遅れて足が入っており警告が出てもおかしくなかった。29分にエムボロを掴んで止めたルベン・ディアスにもSPA(チャンス阻止)で警告が出ても文句は言えない。とはいえ、試合全体でタフな基準を採用したという点と照らすと、いずれもノーカードという判断も許容の範囲内だ。
とはいえ、43分のジョアン・フェリックスに対するシェアのタックルには警告を提示。ラフプレーによる警告なのでアドバンテージ適用後にもカード提示が可能だ。接触の見極め、アドバンテージの適用、カードの提示までパーフェクトな対応だった。
後半10分、ルベン・ディアスに遅れてチャージしたエムボロにはもう少し厳しく注意を与えてもよいようには思えた。ビハインドが広がったことによるフラストレーションが発露したファウルであり、カードで押さえつける必要はないが、口頭でのコミュニケーションでガス抜きをしたかったところだ。
全体的には、イエローカードの基準が若干高い(カードをあまり出さない)ようには思えたが、試合を通しての基準にブレはなく気になるシーンはほとんどなかった。ファウルを採ってもらえなかったエムボロはフラストレーションを溜めただろうが、ノーファウルという判定も受け入れられる範疇だ。ゴンサロ・ラモスが大活躍の裏で、主審のセサール・ラモスも安定感のあるパフォーマンスを見せた。
試合の講評
ゴンサロ・ラモスの陰で
ジョアン・フェリックスも躍動。
序盤はスイスが主導権を握るも、ポルトガルのリスク回避路線が結果的には奏功。
スタメンは継続路線のスイスに対してポルトガルは大きく変更。基本布陣は4-3-3のままだが、前線の中央にゴンサロ・ラモスが初先発。グループステージの3試合ではいずれもロナウドがスタメン→ラモスが途中出場という形だったが、大舞台での代表初スタメンとなった。中盤ではグループステージは3試合とも先発だったルベン・ネヴェスがサブとなり、ウィリアム・カルバーニョがスタメンとなったが、選手特性としては大差ない。
立ち上がりは両チームともに積極性が見られ、最終ラインに対して前線が果敢にプレスをかけるシーンが目立った。最終ラインからのポゼッションという観点では、ペトコヴィッチ前監督時代の取り組みがあるスイスの方がやや優位で、序盤はスイスのペースだったと言ってよいだろう。
ポルトガルとしては、自陣であわやボールロストというシーンが続くなど、スイス側の攻勢に押される展開になった。フェルナンド・サントス監督はリスクを最小限に抑えることを念頭に置くタイプで、自陣からの丁寧なビルドアップという選択肢はほとんどない。自陣でのパス回しはほとんどうまくいかなかったが、見方を変えると「危なそうならひとまずロングボール」という意識づけがポルトガルの致命的なミスを防いだ…とも言えるだろう。
「何もないところから生まれた」先制点。試合を通して、ジョアン・フェリックスが躍動。
そんな中で劣勢だったポルトガルが先制したことは、試合の行方を大きく左右した。ボールを受けたジョアン・フェリックスの反転と浮き球でのパスは見事だったし、ゴンサロ・ラモスの左足のシュートも強烈であったが、戦術的な文脈はほぼ存在していない。完全に個人技の成せる技であり、まさに「何もないところから生まれた」という表現がぴったりだ。
先制後、「うまくいっていたのに先制された」スイスには焦りが滲んだ。縦パスを刺しこむタイミングが少しずつ早くなったり、プレッシングの場面でも行き過ぎてかわされたりなど、少しずつチームとしてのリズムを失っていった印象だ。
このような些細なズレが生じた試合では、ジョアン・フェリックスが活きる。相手のギャップをでボールを引き出し、対峙する守備者の逆手をとって前進。巧みなポジショニングと高いボールテクニックを存分に見せつけた。好不調の波は少なくない彼だが、攻撃面で輝ければ守備にも精が出るタイプで、この試合ではまさしく好循環に入っていた。
ゴンサロ・ラモスはゴール以外にも多大な貢献。オフザボール、守備面でもロナウドを大きく上回った。
ポルトガルとしては、ジョアン・フェリックスとベルナルド・シウヴァにボールが収まるので、スイスの前線のプレスさえかいくぐればその先の前進は比較的容易かった。スイス側もマンマーク気味には付いていたものの、ドリブルでかわされるリスクも感じつつの守備対応だったのでインターセプトやボール奪取には至らず。逆サイドへの展開力も備えた彼らの前に後手後手の守備対応になってしまった。
大会初のハットトリックで大活躍となったゴンサロ・ラモスだが、それ以外の側面での貢献も見逃せない。オフザボールの動き出しを繰り返すことで、裏へのパスを引き出すだけでなく、味方にスペースを提供するという副次的な効果ももたらした。また、守備時に二度追いや三度追いができる点は偉大なる先輩を凌駕しており、この試合に関してはロナウドと比較して見劣りする点はほぼないに等しかった。
個人のミスでゲームプランが崩れたスイス。ヤシン監督としては成す術ナシ。
スイスとしては、時折ポゼッションを織り交ぜながらロースコアで試合を進めたいというゲームプランだったはずで、前半での2失点は完全に想定外だだろう。攻撃面ではそこまで火力が出せる見込みはなかったので、後半頭の3失点目も含めて複数失点は致命傷に近かった。
先制点は右サイドの緩慢な守備対応にはじまり、「効果的なシュートは打てないはず」というシェアとゾマーの油断が原因で失点。2点目もゾーンとマンツーマンを併用する中で、フェルナンデスがマンツーマンで付いていたはずのペペがフリーになって失点。後半頭の3点目はバルガスがダロとの1対1で突破され、交代直後のキュマルトがラモスに寄せきれずに失点。
組織として大きく崩されたわけではなく、個人レベルでのミスの連鎖が生んだ失点であるとも言える。そうなるとヤシン監督の采配云々ではできることは少ない。「個の力」という概念は日本サッカー界でも常用語句になりつつあるが、その重要性を痛感する試合となった。
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