「Match Officials Mic’d Up」と「Jリーグジャッジリプレイ」の決定的な違い
SkySportsにて、今シーズン(2023-2024シーズン)から、「Match Officials Mic’d Up」という番組が放送されている。
出演者は、プレミアリーグの審判を統括する団体であるPGMOLのトップを務めるハワード・ウェブ。プレミアリーグの元審判員で、欧州チャンピオンズリーグ決勝やワールドカップ決勝も担当した実績十分の人物だ。相手を務めるのは、元イングランド代表FWで、現在は解説者として活躍するマイケル・オーウェン。彼が司会を務め、ウェブが解説するスタイルで番組は進行していく。
日本の審判関連のコンテンツとしては、DAZNおよびYouTubeでの配信コンテンツとして「Jリーグジャッジリプレイ」が放送されている。同番組も、選手と元審判員の有識者が出演し、注目の判定について議論する…という内容となっている。
音声があれば、審判団のやり取りを把握したうえで議論ができる。
毎節の直後に配信・放送されるという点も含め、両番組は方向性自体は似通っているが、決定的に異なる点が1つある。それは「現場の審判団のやり取りをふまえた議論か否か」という点だ。
「Match Officials Mic’d Up」においては、VARを含む審判団の実際のやり取り音声を聞くことができ、それをふまえてウェブ氏が見解を述べるという形式になっている。これにより、仮にミスジャッジが起こったとしても「どうしてミスジャッジが起こったのか」を事実に基づいて議論することができる。
Jリーグジャッジリプレイでは審判員の発言権がない。事実と異なる批判を一方的に受ける可能性がある。
一方で「Jリーグジャッジリプレイ」は、実際の審判団のやり取りを出演者は把握できていない。出演者は映像およびマイクが拾った限られた音声に基づいて事象を捉え、自らの見解を述べる。この際、現場の審判団の感情・思考・やり取りは「想像」で語られ、ときとして事実とは異なる場合もある。
言うなれば、「Jリーグジャッジリプレイ」においては、実際の審判団には発言権がない。出演者の「想像」(ときとして「憶測」であり「邪推」)が事実と異なっていたとしても、それを反論する術はない。
番組の反響・影響力が大きくなればなるほど、そこでの出演者の発言は重みを増す。その発言が事実と異なっていたとしても、それはあたかも公式見解かのように流布され、審判員はときとして理不尽な批判を浴びることになる。
過激な言い方をしてしまえば、現状の「Jリーグジャッジリプレイ」は、審判団への一方的な暴力になる可能性を持っている。もちろん、元審判員が審判の気持ちに寄り添ってフォローしたり、ナイスジャッジを取り上げたりなどの工夫は見られるものの、特に明らかなミスジャッジにおいては審判は一方的に殴られるだけになっている。
明かなミスを犯した審判が批判を浴びるのは致し方ないことではあるが、それは事実を正確に把握したうえでの批判であるべきだ。想像や憶測に基づく批判は、言葉の暴力に他ならない。
PGMOLとJFA審判委員会の独立性には大きな差があるが、それは日本サッカーのために越えるべきハードルだ。
PGMOL(プレミアリーグの審判を統括する団体)が独立性の高い組織であることが、審判の音声の活用などの機動力に繋がっているのは間違いない。審判委員会がJFAの一部門でしかない日本では、PGMOLほどの「やりたい放題」はできず、越えなければいけないハードルは多い&高い。
また、審判員とて人間なので、ときとして不適切な内容(例えば暴言)がやり取りに入りこむこともありうる。それらを包み隠さずに公開することで、必要以上の批判を浴びる可能性もあり、単にすべてを公開すればよいというわけでもない。
しかし、VARの導入などもありジャッジへの関心が高まっている今だからこそ、「競技規則の正しい理解」と「審判員へのリスペクト」を実現せねばならない。それは日本のサッカー文化が発展する中で、向き合うべき課題であると思う。
審判員の人権を守り、ジャッジに関する意識・知識が高めるために、「Match Officials Mic’d Up」と同様のコンテンツは必要不可欠だと考える。一日も早い環境整備を期待しつつ、私自身もその実現に寄与できるよう努めていきたいと思う。
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