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試合を円滑かつ魅力的に。競技規則の奴隷ではない審判員。飯田主審の好判断。(J1第7節)

J1リーグ第7節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。

Referee Topics

ハンド判定は厳しい。

しかし、VARは介入できない。

福岡 vs 京都

(主審:福島孝一郎 VAR:今村義朗)

75分、ルキアンがフリックしたボールが麻田の右腕に当たり、福島主審がPKを宣告。このPKを決めて同点に追いついた福岡が勢いそのままに逆転勝利を飾っており、試合の結果に大きく影響を与えるジャッジとなったことは間違いない。

ボールタッチからの距離・時間はほとんどなく、接触を避ける猶予はなかったうえに、腕が大きく広がっているわけではないのでやや厳しい判定には感じた。とはいえ、論点となるのは「腕の位置に妥当性があるか(広がっているか)」という主観的な点になるので、VARには介入の余地はほぼない。個人的にはノーハンド寄りの意見だが、私がVARであっても介入はしないだろう。

モヤっとする部分はあるが、現行のVAR運用フロー(明らかなミスジャッジを正す)に照らせばやむを得ない。なお、介入があるとすれば、麻田の腿に接触したのちに腕に当たった…ということであればハンドにならないことがある。ただ、結局OFRをレコメンドしなかったということはその映像証拠はなく、福島主審の判断を覆すだけの材料はなかったということだろう。

C大阪 vs 札幌

(主審:清水勇人 VAR:上田益也)

前半9分、レオ・セアラがエリア内で倒れるも当初はノーファウル。結局、VARレコメンドによるOFR(オン・フィールド・レビュー)の末、清水主審はファウルを採ってPKを与えた。

リプレイ映像で見ると、レオ・セアラが切り返したところで残り足を中村が払うような形になっており、接触があったことは間違いない。レオ・セアラが両足を揃えて倒れたこともあって「レオ・セアラ側が接触を誘発(イニシエート)した」という印象は強くなったが、多少オーバーリアクションだっただけでファウルを採るのは妥当な判定だろう。

G大阪 vs 川崎F

(主審:飯田淳平 VAR:吉田哲郎)

後半、車屋が2枚目の警告を受けて退場に。飯田主審はファウルが起こったあとにアドバンテージを適用してガンバの攻撃を続けさせたうえで、シュートが不発に終わったところで試合を止め、警告を提示し退場処分とした。

アドバンテージ適用については2つの論点がある。1つは「アドバンテージ適用により懲戒罰はなくなるのではないか」という点だが、これは反則がSPA(チャンス阻止)の戦術的ファウルだった場合であり、ラフプレーの場合にはアドバンテージを適用したとしても後で警告を提示することができる。

もう1つは「2枚目の警告に対してアドバンテージを適用すべきだったのか」という点だ。競技規則を参照すると、以下のような記載がある。

明らかな得点の機会を除き

、著しく不正なプレー、乱暴な行為または2つ目の警告となる反則を含む状況で、アドバンテージを適用するべきでない。

『サッカー競技規則2022/23』

第12条 ファウルと不正行為 - 3. 懲戒処置 - アドバンテージ

※太字は筆者が付与。

今回の事象はチャンスにつながるものだったが、ゴールとの距離も遠かったので「明らかな得点の機会」と言えるほどではなかったように思われる。したがって競技規則の記載に沿って考えると、アドバンテージを適用せずに即座に2枚目の警告を提示するのが妥当だったように思う。

とはいえ、試合の流れを切らないことを重視する昨今のサッカートレンドからすると、飯田主審の判断を支持することもできるだろう。審判の使命は競技規則を厳格に適用すること自体にあるのではなく、試合を円滑かつ魅力的に進行することにあるので、個人的には飯田主審の判断も尊重したい。

なお、アドバンテージを適用した状態で該当選手(車屋)がプレーに関与した際にはその時点で警告を提示して退場処分にする必要がある。

アドバンテージを適用した場合、主審は次にボールがアウトオブプレーになったとき、その競技者に退場を命じなければならないが、

競技者がボールをプレーする、もしくは相手競技者にチャレンジする、または妨害した場合、主審は、プレーを停止し、競技者を退場させ、間接フリーキックでプレーを再開する。

『サッカー競技規則2022/23』

第12条 ファウルと不正行為 - 3. 懲戒処置 - アドバンテージ

※太字は筆者が付与。

各試合の講評

4バック移行の柏が初勝利。

シンプルな攻撃戦術がトレンド?

柏 vs 鹿島

開幕6試合未勝利のレイソルは一貫して採用してきた3バックを諦めて4バックを採用。フラットな4-4-2で、2トップには個での打開力にも優れた細谷とフロートを起用した。一方のアントラーズはピトゥカが復帰した以外はおおむね継続路線。中盤の一角では土居が引き続きスタメンとなり、実質4トップ状態の攻撃的な布陣となった。

結果としては細谷の虎の子の1点を守り切ったレイソルが今季初勝利。フラットな4-4-2にしたことでプレー原則がシンプルになり、特に攻撃面では2トップのキープ力と推進力を活かす戦術が機能してアントラーズを押し込んだ。守備面ではライン間を使われるシーンが多く修正が必要だが、個々のハードワークも際立ち、巻き返しのきっかけになりそうな一戦といえよう。

一方のアントラーズはこれで3連敗。いずれも悪い試合内容ではないが、セットプレー以外に攻撃の形が少なく、選手間の距離感もバラバラで有機的な崩しが見られないのは大きな課題だ。こちらも個々の能力が高い選手が揃っており、2トップに適したフォワードも多いので、レイソルと同じく4-4-2のほうが戦いやすい気がするが…。岩政監督の決断やいかに。

広島 vs 鳥栖

サンフレッチェは継続路線ながら、満田をシャドーに戻して右ウィングバックには高卒ルーキーの越道を起用。川村はボランチのほうが展開力や推進力を発揮しやすく、満田はスピードが求められるワイドよりはセンターで活きるタイプ。特に満田を中央で起用すべきである旨は本ブログでもたびたび指摘してきたが、それを満たした妥当性のあるスタメンとなった。

結果としては後半途中出場のドゥグラス・ヴィエイラが決勝点を上げて連勝となったが、立ち上がりから越道が縦への突破力を見せつけ、満田も狭い局面の打開の巧さを披露。川村の3列目からの攻撃参加も効果的で、内容面でサガンを上回っての勝利となった。

スキッベ体制1年目の昨季はの能動的なサッカーで一定以上の手ごたえを得たはず。対戦相手のサガン鳥栖も然りだが、個々の豊富な運動量がベースになるサッカーなので、夏場の連戦を乗り越えられるか…が鍵になるだろう。その意味でも、越道の台頭や途中投入が続くエゼキエウ、ヴィエイラの輝きは選手層拡充に向けて好材料だ。

神戸 vs 新潟

開幕から勝ち星先行で首位に立つヴィッセルと連敗で開幕直後の勢いがやや落ちてきているアルビレックスの対戦はスコアレスドロー。後半アディショナルタイムにパトリッキが決勝ゴール…かと思われたが、その前の大迫がオフサイドでVARによりゴール取り消しとなった。

ヴィッセルとしては、日本屈指のキープ力を持つ大迫をシンプルに活かした攻撃が非常によく機能している。昨季までは後方からのビルドアップでミスが起こることも多かったが、今季はややラフでも大迫にロングボールやハイボールを当てることでリスクを最小化できており、自陣でのミスが明らかに減っている。また、大迫のキープを見越して武藤や汰木、山口などが迷いなく前進していることで厚みのある攻撃が生まれている。

一方のアルビレックスは伊藤と両ワイドの推進力を活かした攻撃が一定の効果を見せるものの、そのほかの攻撃バリエーションが欲しいところ。ロングフィード一発での裏抜けなど、大きく展開を進めるプレーはもう少し増やしてもよさそうだ。守備面においては早川とトーマス・デンが大迫に手を焼いたが、守護神の小島がファインセーブを連発してチームを救った。毎試合のように負傷者や出場停止が出ている状況では守備陣が安定感に欠けるのはやむを得ず、しばらくは小島頼みもやむなしか。



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