VAR不在でも任務を遂行した審判団に拍手を。VARは試合成立の必須条件に非ず。(J1第12節)
J1リーグ第12節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。
Referee Topics
前代未聞のVAR機器の手配ミス。
4人体制の審判団は任務を遂行。
新潟vs柏
(主審:池内明彦 副審:渡辺康太
VAR:なし
)
VARカーがJリーグ側の手配ミスにより到着せず…という前代未聞の事態が発生。VARなしでの運用となった。
試合内容としては、議論になりそうなのは12分の新潟のゴール取り消しくらいか。鈴木がゴールネットを揺らすも、渡辺副審の旗が上がってオフサイド。オフサイドポジションにいた藤原が鈴木のシュートの軌道のすぐそばに立っており、ボールをよける動作もしていることから、GKに影響を与えたと判断するのが妥当だろう。渡辺副審の見事な見極めであった。
なお、今回のオフサイド判定においては、渡辺副審から確認できるのは「j藤原がオフサイドポジションにいた」という点のみと考えられ、「プレーに関与したか/相手に影響を与えたか」はより近い位置にいた主審の判断となると考えられる。渡辺副審のフラッグアップが遅れたのは、おそらくインカムで池内主審とやり取りをしたのちにジャッジを下したからであり、判断自体が遅れたわけではないと思われる。
機材の手配ミスについては、VARはJリーグ運営のみではなく、ソニーPCL株式会社などの技術部門を擁する関係会社と連携して運用している。今回の出来事の責任が誰にあるのかは不明だが、このあたりはJリーグ側での再発防止がなされることだろう。
なお、VARは判定の精度を高める手段として導入されているが、試合成立に必須の要素ではないので、今回の出来事で試合が中止や不成立になることはない。今回のような機材面のトラブルに加え、主審・副審の負傷などが生じた際にVAR担当がスライドすることもあり、その際もVARなしでのジャッジとなるケースはありうる。
ちなみに、個人的な驚きは「VARの設定にはスタジアムに車両到着後4.5時間程度の時間を必要とする」(上記記事内より引用)という点。そんなに時間がかかるのか…という印象だが、それだけ精密なテクノロジー運用は難しいということなのだろう。
C大阪 vs 鹿島
(主審:中村太 VAR:大坪博和)
71分、上門が伸ばした足が常本の顔面にヒット。悪意はなかったとはいえ、高く上がった足裏が顔面に接触する形となっており、安全への配慮が欠けた行為だ。レッドカードで一発退場…という中村主審の判断は致し方ないだろう。
中村主審としては、ロングボールに対して中央寄りに留まったため、接触の強度は見極めにくい位置での判定になったようには見えた。今回は顔面に足裏が接触したことは明らかだったのでレッドカード判定に至ることができたが、接触箇所が異なった場合は接触の強度・深さが論点になってくる。今回のシーンではボールが高く上がっている間にメインスタンド寄りにポジションを修正し、距離を詰めつつ角度を作って事象を見たかったところだ。
なお、危険なタックルをした上門に対して鈴木優磨をはじめとする鹿島の選手が詰め寄る様子が見られたが、仲間を想う気持ちは理解できるものの、好ましい振る舞いとは言えない。上門自身が反省の意思を示していたこともあり、常本を気遣うのみで十分であった。熱さを履き違えてはならない。
札幌 vs FC東京
(主審:山下良美 VAR:清水勇人)
35分、エリア内でバングーナガンデと福森が接触するもノーファウル。ここでVARが介入し、山下主審がOFR(オン・フィールド・レビュー)を行った結果、札幌にPKが与えられた。山下主審としては、J1担当試合で初のOFRとなった。
初見では私もバングーナガンデがボールに触れたように見えたが、リプレイ映像で見るとボールには触れておらず、福森をトリッピングする形となっている。VARのレコメンド、結果的なPK判定はいずれも妥当だろう。
広島 vs 福岡
(主審:谷本涼 VAR:福島孝一郎)
11分、満田に対して小田が後方からタックル。谷本主審は即座にイエローカードを提示した。足裏などがヒットしたわけではないが、足の下部をもろとも巻き込むハードタックルで、ボールにチャレンジできる可能性はほぼないこともふまえると、かなり悪質だ。当の満田はのちほど負傷交代となっており、その事実もタックルの強度を物語っている。
とはいえ、現実的にあのプレーにレッドカードを出すのは難しいだろう。足裏への接触やアキレス腱へのタックルなどであれば別だが、「無謀」ではあっても「過剰」とまでは言えないというのが個人的な印象だ。程度としては「オレンジ」の域を超えることはなく、警告の判断であればVARの介入も当然ナシだ。
神戸 vs 横浜FC
(主審:御厨隆文 VAR:木村博之)
44分、こぼれ球に反応した大迫をブローダーセンが倒してPK。大迫が先にボールを触りブローダーセンが遅れて出した手が大迫の足にかかっている。ファウルではあることは明白であり、御厨主審としては事象が見やすい手前側のポジションをしっかり取っていた時点で「Easy Decision」だった。
各試合の講評
5バックで希望は見えた。
次は先制点。横浜FCの苦悩。
神戸 vs 横浜FC
前節、(やっと)5バック気味の布陣を採用して今季初勝利を得た横浜FCは、今節も5バックを継続。前半は辛抱強く守っていたが、前半終了間際にブローダーセンが痛恨のPK献上。後半は反撃を試みたが、J1屈指のカウンターの破壊力を誇るヴィッセルを前に2失点を喫して完敗となった。
先制に成功した前節は無理に前に出ていく必要がないので露見しなかったが、ビハインドとなった今節では前掛かりになったところで守備の脆さが出てしまった。また、守備の枚数を増やしたことで攻撃の厚みは当然減っており、前線で小川航基が孤立している場面も少なくなかった。
横浜FCの現時点での最適解が5バックであることは間違いないが、引いて守りを固める中でもチャンスを作るためには2トップのほうが適しているだろう。小川航基とサウロ・ミネイロあたりを並べる布陣であれば、彼らのキープ力を活かして全体を押し上げる時間が作れるはずだ。
カウンターへの脆さをふまえると、ビハインドを追って前掛かりにならざるをえない展開は避けたい。その意味でも重要なのは先制点。今季の横浜FCは前半の早い段階で先制される試合が多いだけに、前半を無失点で抑えつつ、あわよくば先制点を…というのがめざすべき姿だろう。
札幌 vs FC東京
過密日程の影響もあり、両チームともに前節からメンバーの入れ替えが目立った今節。コンサドーレの強力攻撃陣が前半から爆発し、FC東京を粉砕。「ハマれば強い」というミハイロビッチ監督らしい試合となった。今季加入の浅野は流動的な前線でイキイキとプレーしており、既にキャリアハイとなるゴールを稼いでいる。
FC東京としては、前節から最終ラインが総入れ替えとなったが、ライン設定がズレる場面が目立ち、裏への飛び出しに優れた小柏や浅野に突破を許した。ギャップでボールを受けられたところに慌てて寄せるも、そうなるとマークがズレてファーサイドがフリーに。札幌にとっては絶好のカモになってしまったか。個人としては、昨季の大怪我以来トップフォームを取り戻せていないエンリケ・トレヴィザンが気になるところだ。
広島 vs 福岡
久々に2トップを採用し、ベン・カリファとソティリウの助っ人外国人を2枚並べたサンフレッチェ。1点を先行されるも後半の3得点で逆転勝利。クロス、セットプレー、ロングカウンターと攻撃の幅を見せつけた。
とはいえ、注目の2トップはあまり機能せず、後半頭からはベン・カリファに代えてエゼキエウを投入し、本来の3-4-2-1に。2トップが問題…というよりは、それによりボランチが1枚になることで、守備強度が下がり自陣での組み立ても若干手こずるため、肝心の2トップにボールが届かない…という印象だ。
そして、満田がまたしても右ウィングバックで起用されているのも気になるところ。本ブログでは昨季から再三指摘しているが、純粋な走力に優れているわけではない彼の適性は明らかにシャドー(ないしインサイドハーフ)であり、上下動が必要となるサンフレッチェのウィングバックは身に余る。
今節では小田のタックルを受けて負傷交代となったが、代わって越道が入ったあとに流れがやや良化したのは偶然ではないだろう。スキッベ監督の采配にはおおむね違和感はないのだが、満田のサイド起用だけは解せない…。
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