【ジャッジ解説】三笘薫への危険タックルとシェフィールドの複雑なゴール取り消しについて
イングランドプレミアリーグ第25節。三笘薫が関係したこともあり日本でも話題になった一戦の判定を振り返る。
シェフィールド・U vs ブライトン
Referee:
スチュアート・アットウェル
Assistant referees:
ニール・デイビーズ
スティーヴ・メレディス
4th Official:
アンソニー・テイラー
5th Official:
マイケル・オリヴァー
Video Assistant:
マイケル・オリヴァー
マーク・スコールズ
豪華な審判団はデ・ゼルビ対策か?
上位対決というわけではなく、かと言って残留を争う6ポインターでもない試合だったが、審判団は非常に豪華。イングラウンドのWエースであるオリヴァーとテイラーがそろい踏みで、彼らに次ぐ立ち位置にいるアットウェルが主審を務めた。
昨季よりブライトン絡みの誤審騒動が相次ぎ、デ・ゼルビ監督がテクニカルエリアで「暴れる」シーンも多い。今節、ベンチ入り禁止処分が明けるデ・ゼルビ監督がベンチに戻ってくる中で、アンソニー・テイラーを4thで起用するのはデ・ゼルビ対策の意味合いもありそうだ。
ホルゲイトのタックルは非常に危険。退場処分に異論の余地はない。
11分、三笘のドリブル大してホルゲイトがスライディングタックル。アットウェル主審は数秒待った後に強めの笛を吹き、ホルゲイトにイエローカードを提示したが、ここでVARが介入。OFRの結果、ホルゲイトにはレッドカードが提示された。
リプレイ映像で見ると、ホルゲイトの右足が高く上がり、ボールに空振りした挙句、三笘の膝に足裏がヒットしていることが確認できる。ホルゲイトの右足はボールに触れることができておらず、勢いがついた状態で膝の内側に足裏が入る…という非常に危険なプレーであり、レッドカードであることは疑いの余地がない。相手選手の安全を大きく脅かすプレーであり、悪意はないにしても、厳罰を求める声が高まるのは必然だろう。
副審がいないタッチライン際は審判団の泣き所。
アットウェル主審としては激しいタックルであることは認識しつつも、接触部位を正確に見極めきれなかったようには思える。ホルゲイトの左足(三笘にヒットしたのとは逆足)がボールに触れたのもあり、「ボールに対してプレーしたが、必要以上の力でチャレンジした」というように見えたのはやむを得ない部分もある。
ファウルが起きた場所は、タッチライン沿いに副審がおらず、A2もかなり遠い位置からの見極めになるゾーンであり、審判としても泣き所になりやすい。だからこそ、三笘のボールタッチが大きくなったところでポジションを修正し、角度を作って接触を見極める努力が必要であった。結果的に接触部位を見極められたか…は確実ではないが、アットウェル主審に努力の余地はあったと言えよう。
ゴール取り消し:当初判定は「ファウル」だった?
つづいて前半終了間際、コーナーキックの混戦から、最後はオズボーンがゴールに押し込んだシーンでもVARが介入。OFR(オン・フィールド・レビュー)の末に、ゴールが取り消しとなった。
まずは起こった出来事を振り返る。
プレーが起こった直後のアットウェル主審のジェスチャーは「ブライトンの直接フリーキック」であるように見える。つまり、「シェフィールドのファウル」であるとアットウェル主審は判断していることになる。なお、もしオフサイドの場合には間接フリーキックのジェスチャー(手を上げる)をするはずなので、当初判定はオフサイドではない。
続いて、OFR時の確認事項を見てみると、まずは「ファウル」を確認し、そのあとに「オフサイド」を確認していることがわかる。つまり、まずはファウルというアットウェル主審の判断が正しいかどうか確認したうえで、VARが発見したオフサイドの可能性に関するチェックをおこない、最終ジャッジを下したことになる。
そして、アットウェル主審のOFR後のジェスチャーとしては、結局「ブライトンの直接フリーキック」を指しているように見える。ただ、このときのアットウェル主審はビデオシグナルをし忘れるなど「アタフタ」している印象があり、このジェスチャーは誤りで、「オフサイドで間接フリーキック」というジャッジであった可能性はある。(後述)
ゴール取り消し:ヴィニ・ソウザのハンドを採るのは厳しい。
では、事象について詳しく見ていくことにする。
まず、ファウルの可能性があるプレーとしては、ヴィニ・ソウザのハンドもしくはホールディングがあるように見える。折り返しのボールがヴィニ・ソウザの腕に当たっているのは間違いないので、あとはその腕の位置や不自然さが判定のポイントになる。また、ヴィニ・ソウザは相手を腕で押さえているようにも見えるので、このシーンはホールディングの可能性もある。
個人的にはハンドでもホールディングでもないと考える。折り返しのボールが到達するまでの時間は非常に短く、腕がボールに向かって動いているようにも見えない。もちろん、相手に腕をかけていること自体が不自然と捉えることもできなくはないが、あれでハンドを採るのは厳しいと思う。
OFRにおいても、このシーンを見たうえでオフサイドのチェックに移っている。もし、このシーンはOFRしたうえでファウル(ハンドもホールディングも含む)と判断した場合には、オフサイドのチェックをするまでもなくゴールは認められない。すなわち、オフサイドのチェックに移ったということは、OFRを経た審判団の結論は「ノーファウル」だったと考えられる。
ゴール取り消し:「オフサイド」判定が妥当。
次に、OFRの2つ目の観点となったオフサイドについて。まず、ボールの流れを整理すると、以下の通りになる。
シェフィールド⑲がヘディングで折り返し
シェフィールド㉑の腕に当たる
ブライトン㊵の顔に当たって跳ね返り
シェフィールド㉓がゴールに押し込む
得点者であるシェフィールド㉓のオズボーンの位置を見てみると、1の時点で既にオフサイドポジションにいることがわかる。彼がオフサイドにならないパターンとしては、守備側の意図的なプレーの後にボールを受けた場合に限られるが、3の顔に当たったことを「意図的なプレー」と捉えるのは無理があり、オフサイドは成立すると考えるのが妥当だ。
OFRにおいてもオフサイドのチェックが最後におこなわれて判定に至っており、最終的なジャッジは「オフサイドによるゴール取り消し」であったと推察される。そして、私自身もその判断が正しいと考えている。
ゴール取り消し:最後のジェスチャーは誤り?
ただ、そうなると冒頭で整理した「起こった出来事」において、アットウェル主審のOFR後のジェスチャーが「直接フリーキック」であったことが不可解である。OFRの流れからしても、最終ジャッジはオフサイドだと思われるので、本来は間接フリーキックのジェスチャーが正しいはずなのだが…。
ここからは想像の範疇になるが、このときのアットウェル主審はビデオシグナルをし忘れるなど「アタフタ」している印象があった。仮に、このジェスチャーが誤りで、ジャッジとしては「オフサイドで間接フリーキック」であった…ということであれば、すべての説明がつく。
いずれにしても、ゴール前での混戦であり、ファーサイドでの折り返しやディフレクトが絡んだこともあり、審判団としては難しい見極めが必要ないシーンとなった。
この場面は、数的不利のシェフィールドが1点差に追いつけば試合の流れを取り戻す可能性があり、ゴールを認めるかどうかは非常に大きな判定であった。OFRの後に両チームのキャプテンを呼んで説明をしたのは的確なオペレーションだったが、そのあとのジェスチャーでミスが生じた可能性はある。
この件はおそらく「
Match Officials Mic’d Up
」でも取り上げられるだろう。審判団の実際のやり取りを把握したうえで議論するのがよいはずなので、番組配信を心待ちにしたい。
本記事は参考情報として提供しており、内容の正確性・最新性について保証するものではありません。
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