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同じ轍は踏まず。3バック移行とハイプレスでオーストラリアの反撃を返り討ちに。(カタールW杯)

カタールW杯決勝トーナメント1回戦。アルゼンチン vs オーストラリアの一戦を講評する。

アルゼンチン vs オーストラリア

<Referee Topics>

カードに頼らない巧みなマネジメント。

レベルの高さを証明。

Referee:

Szymon Marciniak (Poland)

Assistant referees:

Paweł Sokolnicki (Poland)

Tomasz Listkiewicz (Poland)

Video Assistant:

Tomasz Kwiatkowski (Poland)

近年のUEFAチャンピオンズリーグで実績を積み上げたマルチニアク主審。序盤からボールを保持するアルゼンチンに対して出足よく対応したオーストラリアのやや遅れ気味のチャージが目立つ展開となったが、選手とコミュニケーションをとりつつ試合を徐々に落ち着かせていった印象だ。

とはいえ、遅れてチャージし足を踏みつけてしまったアーバインに対しては躊躇なく警告を提示。今大会は「踏みつけるとほぼ例外なく警告」という傾向も見られるが、それを抜きにしてもラフプレーで十分に警告に値するプレーだった。

34分のシーンは象徴的。メッシとアウトオブプレーで小競り合いを起こした後にファウルを犯したベヒッチに対し、警告ではなく口頭での注意に留めたマネジメントは見事。あの場面で警告を提示しても選手の落ち着き度合いは少ないので、あの場面は口頭で諭しつつ少し時間をとることが最も有効。素晴らしいマネジメントだった。

試合中にいくつか起こった小競り合いにも迅速に介入し場を収めた。ファウルのジャッジ、マネジメントともに申し分なく、ベスト8以上の試合でも割当が期待できそうだ。

試合の講評

オーストラリアのギアチェンジは想定内。

3バック移行&ハイプレスで返り討ちに。

スタメンはともに継続路線。アルゼンチンは実績よりコンディション重視の傾向が見られる。

アルゼンチンはグループステージ第3戦で負傷を抱えたディマリアがベンチスタートとなり、アレハンドロ・ゴメスをウィングで先発起用。グループステージでの巻き返しに貢献したエンソ・フェルナンデスをアンカー気味に配置した4-3-3を採用し、メッシの脇を固めるのはラウタロではなくアルヴァレス。このあたりは4年間の序列よりも今大会での調子・コンディションを重視する起用にも思える。

一方のオーストラリアもおおむね継続路線。右サイドバックにはセンターバックタイプのデゲネクを起用し、今大会で印象的な活躍を見せるソウターとともに右サイドの守備を引き締める。2トップはカウンター適性が高いアタッカータイプのデュークとマグリーを置く。

オーストラリアは適度に前に出てコンパクトに。サウジアラビアや日本と同じアプローチ。

オーストラリアは、戦前の予想では自陣にベタ引きという見方もあったが、2トップがアルゼンチンの最終ラインの縦パスのコースを制限するプレッシングを見せつつ、最終ラインは押し上げてスペースを圧縮。裏にスペースができている印象はあったが、メッシを含めて足元でボールを受けるタイプの選手が多かったこともあり、裏を突かれるシーンはあまりなかった。

基本コンセプトとしては、グループステージでアルゼンチンを破ったサウジアラビアと同じような戦い方だ。日本がドイツやスペインに対して前半に採った戦術とも近しく、「前半は最少失点で凌ぐ」というアプローチはアジアのチームの定番になりつつあるようだ。

アルゼンチンの攻撃の課題は「深さ」と「幅」。中央を固められると攻めあぐねてしまう。

一方のアルゼンチンとしてはボールを保持したものの攻め手はなかなか見えず。オーストラリアは4-4-2で構えつつ、中盤の4枚がセンター寄りのポジションでバイタルエリアを締めていた。メッシを軸とする中央突破が攻撃パターンであるアルゼンチンとしては、中央のスペースを消されたことで、アタッカー陣が仕掛けるシーンがなかなか作れず。中央を固められた場合に攻めあぐねる課題はサウジアラビア戦で露呈した通りだ。

攻撃の糸口としては、フリアン・アルヴァレスは裏に抜ける動きをより増やしてもよかったようには思える。また、スカローニ監督の信頼が厚いアレハンドロ・ゴメスは、局面で高いテクニックを見せるものの、その特長を同じタイプであればディバラ、異なるタイプであればよりセカンドトップ色が強いアンヘル・コレアなどの起用は一考に値したはずだ。

アルゼンチンの攻撃の課題は「深さ」と「幅」である。足元でボールを受けるタイプの選手が多く、裏への抜け出しが少ないので相手の最終ラインはなかなか押し下がらない。また、サイド攻撃は頻度・迫力ともに低いので、相手としては中央を固めていればOKというスタンスになる。陣形をコンパクトに保つことができるのでボールを奪われたときに陣形が崩れにくいという点はメリットだが、攻めあぐねる一因になっていることは確かだ。

先制点はメッシの圧倒的な個の力の産物としか言いようがない。

とはいえ、前線の選手を含めて守備意識は高く、ボールを失ってもカウンタープレスでを即時奪回するシーンもあった。得点の匂いも濃くなかったが、かといって失点の匂いもほとんどしなかった。

そんな中で、セットプレーの流れからメッシがワンチャンスをモノにして先制。あの場面は戦術云々は存在しないし、オタメンディのボールコントロールはおそらくミスだし、メッシのシュートは3人のブロックを潜り抜けている。オーストラリアとしては明らかに崩されたシーンではなく、あれはメッシの圧倒的な個の力の産物としか言いようがない。

オーストラリアのギアチェンジは想定の範囲内。3バック移行とハイプレスで返り討ちに。

ビハインドを背負ったオーストラリアとしては、大方の予想通りで後半からややギアを上げ、前線からのプレスを強めた。もはや王道となった「前半は我慢して後半頭にギアチェンジ」という戦い方はアルゼンチンとしても想定通りで、後半頭にオーストラリアの出方を見たうえで、即座に選手交代を実施。早めに手を打つことで、サウジアラビア戦と同じ轍を踏まないように手を打った。

スカローニ監督が選んだ対応策は、3バックへの移行。アレハンドロ・ゴメスを下げてリサンドロ・マルティネスを投入することで、後方の枚数を増やした。これにより、ボール保持の際には相手の2トップのプレスに対して数的優位を保てるほか、中央の守備でギャップができにくくなり被カウンターのリスクも下げることができる。

そんな中で前線からのプレッシングでボールを奪い追加点をゲット。前半からフリアン・アルヴァレスは精力的にプレッシングをかけていたが、これにインサイドハーフのデ・パウルとマクアリスターも参加。後方の枚数を増やしたことで躊躇なく前進できたという点では、これも3バック移行が生んだシーンであると言えよう。



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