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ルカク決定機逸、ムニエ疲労困憊。個に依存したベルギーは戦術欠如のツケを払った。(カタールW杯)

カタールW杯グループステージ第3節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。

Referee topics

鈴木隆行氏の理解不足は残念。

オフサイドの新解釈の発動も。

クロアチア vs ベルギー

(Referee: Anthony Taylor VAR: Marco Fritz)

韓国vsガーナの一戦でコーナーキックの前に試合を終わらせて批判を浴びたテイラー主審だが、FIFA審判委員会の信頼は揺らがず。グループステージ勝ち抜けが懸かった強豪国同士の大一番を任された。

15分、クラマリッチがカラスコに倒されてPK。クリアを試みたカラスコだったが、ボールをクラマリッチに先に触られ、結果的にクラマリッチのみに接触したというジャッジだった。この判定自体は妥当に思えたが、VARレコメンドによるOFRの結果、接触の前にロブレンのオフサイドがあったとして、PKは取り消しとなった。ロブレンは相手競技者に明らかに影響を与えているので、オフサイドという判定は妥当だろう。

ロブレンがオフサイドポジションにいたことは映像での確認のみで判断を下せるが、ロブレンはボールを触れたわけではないため「相手競技者に影響を与えたか」という点が論点になる。ここは主観の判断になるのでOFRが必須となる。ABEMA解説の鈴木隆行氏が「オフサイドならVARのみで判断できたはず」と述べていたが、VARの運用ルールの理解が甘く、不適切な解説だった。試合内容に関する解説は聞きごたえがあっただけに、競技規則に関する理解不足は残念だ。

チュニジア vs フランス

(Referee: Matthew Conger VAR: Abdulla Al Marri)

フランスがアディショナルタイムに追いつくも、VARが介入。OFR(オン・フィールド・レビュー)の末にグリーズマンのオフサイドを採って、ゴール取り消しとなった。

グリーズマンがオフサイドポジションにいたこと、グリーズマンが触れる前に最後にボールに触れたのがチュニジアの選手であることは明白だ。となると、チュニジアの選手のプレーが意図的であったかどうかはカギになる。

これはオフサイドの新解釈が適用されるシーンだ。守備側がボールをプレーしようとしているものの、「かろうじてボールに触れた」という場合には「意図的なプレー」とは判断されない(=そのプレーによりオフサイドはキャンセルされない)という解釈が今シーズンから適用されている。この判定ではチュニジアの守備者のプレーが「ヘディングのミス」なのか「かろうじてボールに触れた」なのかが判断の鍵になってくるので、OFRが必須であった。

オフサイドを採らなかった当初の判定が「明白な間違い」と言えるかどうかは微妙なところなので、VARの介入条件を満たしていたかどうかは微妙。ただし、映像を見る限りはギリギリでのヘディングには思えるので、オフサイドという判断のほうが納得感は高いように思われる。

ちなみに、このオフサイドの新解釈は、UEFAネーションズリーグにおけるスペインvsフランスのエムバペのゴールシーンがきっかけとなってルール改正(解釈変更)が進んだと言われている。フランス代表としては、W杯の舞台で「返ってきた」という形だ。

なお、ABEMAの中継映像では、ゴール後しばらく経ってホイッスルが鳴ったようには聞こえた。VARの運用上、介入できるのは直後のアウトオブプレーの間までのはずであり、もしキックオフが成されたとすると介入できないようには思われる。ただし、これが試合終了のホイッスルだった場合には、その後でもVARが介入できる余地はある(過去にイングランドプレミアリーグのブライトンvsマンチェスターユナイテッドでもその実績がある)。ここはABEMAではリプレイ映像が流れていたので確認できていないが、どうやらフランスはFIFAへの異議申し立てを検討しているそうだ。

▼オフサイドの新解釈については以下の記事がわかりやすい。

ポーランド vs アルゼンチン

(Referee: Danny Makkelie VAR: Pol van Boekel)

36分、クロスに対して手を伸ばしたシュチェスニーと飛び込んだメッシが接触。シュチェスニーはボールに対して手を伸ばしたもののボールに触れることができず、結果的にメッシの顔に手がヒットしている。VARレコメンドによるOFR、その結果のPKというジャッジは妥当だろう。

マッケリー主審としては、ポーランドのDFも含めて選手が重なってしまい、接触の有無・強度を確認できなかったか。クロスに対するポジション修正が若干遅れたことも影響したようには思われる。(とはいえ現実的に考えて、接触がよく見える位置まで瞬時に移動することはほぼ不可能なのだが…)

サウジアラビア vs メキシコ

(Referee: Michael Oliver VAR: Massimiliano Irrati)

決勝トーナメント進出が懸かった大一番をソツなく裁いた。バート副審のオフサイドジャッジも的確で、審判団として問題ないパフォーマンス。イングランド代表が決勝トーナメントに進出したので割当の可能性は狭まるが、現時点ではW杯デビューとなる大会で堂々たる振る舞いを見せている。

各試合の講評

ベルギーは結局上向かず。

アルゼンチンは上り調子で決勝Tへ。

クロアチア vs ベルギー

グループステージ突破には勝利がほぼ絶対条件だったベルギーはCFタイプのバチュアイを諦めてカラスコ・トロサール・メルテンスという仕掛けとフリーランニングに優れたアタッカー陣を起用。硬直化して手詰まり感もあった攻撃陣に流動性を生み出そうという狙いが見られ、前半からサイド深くにボールを運んで仕掛ける展開はいくつも作ることができていた。

とはいえ、引き分けOKのクロアチアは慌てず焦らず。両サイドのペリシッチやクラマリッチもしっかりと自陣に戻ってサイドの守備に参加することで、センターバックとサイドバックの間を詰めて守備ラインのギャップを作らないように配慮。ときおり連動して高めの位置でのプレッシングは見せるものの、基本的には自陣でコンパクトな陣形を敷いて粘り強く守っていた。

特筆すべきは連動性の高さで、ラインを押し上げるときと低めのブロックで守るときの使い分けが見事。カタールは高温で消耗が激しいという影響もあってか、前掛かりになった前線に中盤より後ろが付いていけず…という場面は今大会で目に付くが、クロアチアに関しては常にコンパクトな陣形を保つことができていた。ここはメンバーを固定して成熟を図ってきた点が奏功したと言える。

ベルギーもおそらくフィニッシャーの不在を痛感したはずで、マルティネス監督は後半頭から案の定ルカクを投入。強靭なフィジカルで起点を作ることには成功したが、少なくとも4回はあったゴール前での決定機はシュートがことごとく枠に飛ばず。見かけよりも難しいシュートではあったが、あれを決められないとチームに流れはやってこない。決定機を1つでもモノにすればヒーローになりえたが、コンディション不足の身体に枠内シュートを飛ばす力はなかった。

能力の高い選手を最大限に活かす道を選んできたマルティネス監督。最後の大舞台で、頼りにしてきた黄金世代の主力のコンディション不足に泣いたのは宿命にも思える。後半の中盤以降はほとんど動けていなかったムニエを終盤まで残したのも「信頼」なのだろうか。ベルギーの選手陣が重そうな身体を引きずりながら、レパートリーにないプレッシングを試みる姿は直近4年のマルティネス体制の停滞を象徴していた。

ポーランド vs アルゼンチン

ともに勝利すれば決勝トーナメント突破が決まる両国の対決は、序盤からアルゼンチンがボールを圧倒的に保持して攻め込む展開に。とはいえポーランドはゴール前を固めて決定機はなかなか作らせず、決定的なシュートシーンはシュチェスニーが阻止した。アルゼンチンの攻撃はミドルシュートやクロスが多くなっていた。

ただし、後半開始早々にマクアリスターが値千金の先制ゴールをゲット。前半はマクアリスターやデパウルがエリア内に侵入するシーンは稀だったが、クロスを中央で待つ枚数を増やしたことが奏功した。このあたりはハーフタイムでのスカローニ監督の修正力も評価に値する。

後半の中盤以降は疲労もあってポーランドの寄せが徐々に甘くなり、アルヴァレスが追加点をあげて試合を決定づけた。初戦で敗れたことでターンオーバーができなかった点は蓄積疲労という面で決勝トーナメントに響きそうだが、初戦の敗戦を経てチーム状態を上向きだ。



本記事は参考情報として提供しており、内容の正確性・最新性について保証するものではありません。

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