残留エヴァートン、降格レスター&リーズ。チームアイデンティティの再考が必須。(プレミア第38節)
イングランドプレミアリーグ第38節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。
Referee topics
ボールの行方が予期できたか。
ハンド判定で重要な要素に。
ブレントフォードvsマンチェスター・C
(Referee: ジョン・ブルックス VAR: ダレン・ボンド)
54分、混戦の中でリコ・ルイスの腕にボールが当たるもPKはなし。スライディングの際のいわゆる「支え手」ではあるが、現行の競技規則では「支え手であればノーハンド」というわけではなく、そこに腕がある妥当性(「自然」かどうか)によってはハンドを採られる場合もある。
今回の場合、リコ・ルイスとしてはおそらくシュートブロックのつもりでスライディングで飛び込んでいるはずだ。(不可抗力とはいえ)腕がやや広がっているのは事実なので、仮にゴール方向にボールが飛んでいれば、「シュートが体に当たることを期待した」プレーなので、ハンドを採られる可能性はある。
一方で、今回のようにベン・ミーのキックが横方向に飛ぶクロス性のボールになったことは、リコ・ルイスにとっては想定外であり、予測するのは難しい。腕の広がりは「不自然」とまでは言えず、ボールの軌道が予想外だったこともふまえると、ノーハンドというジャッジは妥当だと考えられる。
マンチェスター・U vs フラム
(Referee: ロバート・ジョーンズ VAR: ダレン・ボンド)
25分、エリア内でカゼミーロがケアニーを倒してPK。切り返しに対して逆をとられ、残った足で典型的なトリッピングを犯してしまった。ファウルであることは明白であり、ジョーンズ主審の仕事は縦に速い攻撃に大きなストライドを活かして付いていくことだけだった。
アストンヴィラ vs ブライトン
(Referee: デーヴィッド・クーテ A1: サイモン・ベネット VAR: グレアム・スコット)
A1のベネット副審としては、VARのOR(オンリー・レビュー)によりオフサイド判定を2度修正されるという悪夢に。19分のウンダブのゴールはエンシソの足が僅かに出ておりオフサイド、逆に38分のウンダブのゴールはぎりぎりでオンサイド。いずれも際どいラインジャッジではあったが、副審としては悔しさが残ることだろう。
ベネット副審はもともとオリヴァー審判団の一員で、EUROやワールドカップにも派遣されていたが、シーズン終盤からは別審判団での活動となっている。理由は定かではないが、EURO2024などでの割当を見据えると、正確なラインジャッジを積み重ねて実績を作り返り咲きを狙いたいところだ。
各試合の講評
エヴァートン・レスター低迷
の一因は移籍市場にあり。
ボーンマスを1-0で辛くも下したエヴァートンが残留確定。別会場のレスターが先制して以降は、グディソン・パークの雰囲気は「後押し」というよりは「プレッシャー」にも感じられたが、ドゥクレのスーペルゴラッソで先制し、それ以降はピックフォードを中心に粘り強く守って勝ち切った。
ダイシ監督就任以降は、負け試合を引き分けに持ち込んだり、リードした後も攻勢を緩めずに大量点で勝利したりなど、気持ちがこもったプレーが目立った。このあたりはダイシ監督がモチベーターとしての手腕を遺憾なく発揮した結果だと言えよう。指揮官のサッカーを体現する存在であるドゥクレがチームを救うゴールを決めたのは象徴的だ。
残留というミッションを果たしたことで、ダイシ監督は続投が決定的。ダイシ監督がいきなりモダンフットボールを志向するとは思えないので、クラシックなイングリッシュフットボールが来期以降も軸になるはずだ。カルヴァート・ルーウィンに匹敵するセンターフォワード、良質なクロスが上げられる右サイドアタッカー(左はマクニールがいる)の補強は必須だろう。
ここ数年はフロント主導の補強が目立つエヴァートンだが、方針なき選手の乱獲が低迷の一因であることは間違いない。ダイシ監督という「名より実」の指揮官のもと、監督の志向に合致した堅実な選手補強をすることが来季の成功へとつながるはずだ。
レスターは最終節に勝利したものの、エヴァートンが勝利したことで降格が決定。奇跡と称されたプレミア戴冠から7年での2部降格となった。
降格の要因はさまざまだが、夏の移籍市場での補強の停滞は大きかった。特に主将のキャスパー・シュマイケルの放出の影響は大きく、第2GKのウォードは実力不足を露呈。シュマイケルのファインセーブとキャプテンシーで成り立っていた守備陣は脆さを露呈し、足並みが乱れた最終ラインは単純な失点を重ねた。
攻撃面においてもカウンターの局面では強さを発揮するものの、遅攻になるとマディソン頼みになる傾向はシーズンを通して改善されず。単独突破ができるバーンズの負傷離脱や主砲ヴァーディーの衰えをカバーすることができず、上積みなきチームの降格は必然の結果だ。
もちろん、ロジャース前監督も責任を免れることはできない。守備戦術はプレッシングなのかリトリートなのかすらはっきりせず、攻撃面でもカウンター頼みを脱する策を打てなかった責任は重い。補強による上積みがなかった点は同情の余地はあるが、選手起用や戦術面での工夫をすべてやったか…と言われると疑問符が付く。リヴァプール時代から指摘されていた選手交代の遅さや柔軟性のなさ上位クラブにほとんど勝てない…などの課題は改善の気配がない。ビッグクラブへのステップアップの道はまたしても遠のいた印象だ。
既にティーレマンスの退団が発表されたが、2部降格で財政状況が一段と厳しくなるのは明らかであり、マディソンやバーンズ、エンディディあたりも換金対象だろう。36歳となったヴァーディーにも多くは望めず、新進気鋭の指揮官を迎えて若手主体で仕切り直し…くらいの覚悟が必要になりそうだ。
勝利したうえで他チームの結果待ち…という厳しい状況だったリーズは、トッテナムに完敗し降格が決定。ビエルサのもとで旋風を巻き起こし、昨季は土壇場で残留を果たしたが、今季は奇跡は起こらなかった。
自陣にリトリートしての守備、サイドからのクロスを軸にしたシンプルな攻撃という「アラダイス流」は一定の可能性を示したが、あまりにも時間がなさすぎた。残り5試合では、百戦錬磨のアラダイスと言えども限界がある。結果的には、監督交代によるカンフル効果以上のものを何ももたらせなかったハビ・グラシアを引っ張りすぎたのが痛恨だった。
2部降格となった以上、人員整理は必須であり、そのためにはチームアイデンティティを決める必要がある。ビエルサやマーシュのようなアグレッシブなサッカーを取り戻すのか、あるいはハビ・グラシアやアラダイス流の「キック&ラッシュ」に近い形を継続するのか。おそらくクラブは前者を選びそうだが、それならばハリソンやアダムスは放出してはならず、スピードタイプが全くいない守備陣が補強ポイントになる。指揮官選びを含め、チームアイデンティティを再考し、チームの核となる選手を見定めることが大切だ。
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