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「手前側からのパス」は副審泣かせ。一見すると簡単なオフサイド判定の難しさ。(CL第8節②)

チャンピオンズリーグのMatchday8。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。

Referee topics

出遅れが目立ったルテクシエ。

安定感が際立つトゥルパン。

明暗分かれたフランス勢。

ジローナ vs アーセナル

(Referee: Maurizio Mariani Assistants: Daniele Bindoni、Alberto Tegoni VAR: Daniele Chiffi)

37分、味方とのパス交換でエリア内に侵入したトーマスが倒されてPK。ジローナ④とボールを奪い合う中でボールが前にこぼれ、前進しようとしたところでジローナ④の足がかかった形となった。ボールに対して完全に置いて行かれた状態で、トーマスの進路に足を出しているので、トリッピングのファウルを採るのが妥当だろう。

状況としては、トーマスのラストタッチがやや大きくなったこと、ぎりぎりジローナ側のカバーが間に合いそうなことをふまえると、DOGSO(決定機阻止)とは言い切れず。SPA(チャンス阻止)と捉えたうえで、エリア内でのボールに対するプレーと判断し、懲戒罰は一段階下がってノーカードという判定が適切だろう。

セリエAにおいてベテランの域に達しつつあるマウリツィオ・マリアーニ主審(イタリア)は、うまく角度を作りながら事象を確認し、冷静にジャッジ。ジローナ側の抗議にも落ち着いて対応し、ベテランの風格を見せた。

77分のストゥアニのゴールに関しては、その前に㉔に出た時点でオフサイド。A1のダニエレ・ビンドーニ副審としては、手前側のパサーを左目(間接視野)で捉えつつ、目の前のオフサイドラインを正確に見極める…という状況であり、一見するよりも見極めはかなり難しい。セオリーとしてはオフサイドラインのほうに焦点を合わせることにはなるが、パサーがラインぎりぎりにいる場合はタッチラインを割ったか否かも確認する必要があり、焦点の合わせ方は至難の業だ。VARのOR(オンリー・レビュー)により判定を修正される形になったが、ミスジャッジと断罪するのは酷だろう。

90+2分には、ジローナ⑯のハンドでPK。ディフレクトしたボールに対して反射的に右手が出てしまったと思われるが、微妙なハンド判定が多い昨今では珍しく「誰が見てもハンド」であった。マリアーニ主審としても見やすい位置での露骨な事象…ということで、迷いなく判定を下すことができただろう。

レヴァークーゼン vs スパルタ・プラハ

(Referee: Georgi Kabakov VAR: Dragomir Draganov)

28分、レヴァークーゼンのタプソバのシュートがスパルタ・プラハのアスガー・ソーレンセンの腕に当たったとして、ゲオルギ・カバコフ主審(ブルガリア)はPKを宣告。しかしVARが介入し、OFR(オン・フィールド・レビュー)の結果、腕ではなく頭に当たったことが確認され、PK取り消しとなった。

ソーレンセンの左腕は高く上がっており、ボールが当たっていればほぼ間違いなくPKになるシーンと言える。カバコフ主審としては、ファーサイドへのクロスに対してやや遅れをとってしまい、ポジショニングが追い付かず。結果的に動きながらの見極めとなったこと、角度をうまく作れなかったことで、ボールが当たった箇所の見間違いにつながってしまったと考えられる。

ディナモ・ザグレブ vs ミラン

(Referee: François Letexier VAR: Willy Delajod)

39分、ルカ・ストイコヴィッチのドリブル突破を止めたミランのムサが2枚目の警告を受けて退場に。ストイコヴィッチがパブロビッチをかわして前に出たところで、後ろから手で抱え込んで阻止しており、明らかなホールディングだ。

懲戒罰に関しては、ルテクシエ主審はイエローカードを提示しているのでDOGSOではなくSPAという判断。おそらくストイコヴィッチのラストタッチがやや大きくなったこと、もしくはいったんかわされたパブロビッチが位置的にカバー可能…というどちらかの要素で判断したと考えられる。

個人的には、ストイコヴィッチがスピードに乗った状態だったこともふまえると、シュートに持ち込むことはできたように見えるので、DOGSOで一発退場とすべきだったと思う。ただ、SPAという判断も明白な間違いとは言えないので、VARが介入しなかったのも妥当なところだろう。

※ムサは既に1枚警告をもらっていたので、「どっちにしろ退場」ではあるが、イエロー2枚の退場と一発退場では事後の出場停止処分が異なる(一発退場の場合は2試合以上の出場停止になる確率が極めて高い)ので、このあとの試合も含めて考えると意味合いが異なる。

62分、ラファエウ・レオンの抜け出しに対し、飛び出してきたGKの㉝が接触しPK。㉝の接触がファウルであることはほとんど議論の余地がない。見解が分かれるとすれば、レオンが抜け出す際に追いすがったDFの顔の辺りに腕が当たっていることで、結局はVARが介入しOFRの末にレオンのファウルを採ることになった。

レオンはブロックのために右腕を出したと考えられるが、結果的には振った右腕が相手にヒットする形になっており、腕でのブロックの範疇として正当性を見出すのは難しい。ルテクシエ主審としては、ミランの攻撃が縦に加速したときに若干出遅れてしまい、遠めかつ腕の接触の有無・程度がわかりにくい位置・角度になってしまったのが悔やまれる。

前節までは大一番で説得力のあるパフォーマンスを見せていたルテクシエ主審だったが、この試合はポジショニングの遅れが散見され、縦に速い展開に対して慌てて追いすがるシーンも見られた。リーグ戦含めて連戦が続く中で審判員にも疲労の色があったかもしれないが、UEFAの信頼が厚い今だからこそ安定感が欲しいところだ。

アストンヴィラ vs セルティック

(Referee: Clément Turpin VAR: Jérôme Brisard)

64分、エリア内でボールを受けたワトキンスに対し、セルティック⑥のタックルがファウルを採られてPKに。スライディングでボールを刈り取ろうとした⑥だったが、ボールに触れる前にワトキンスの足に接触しており、残念ながらファウルだ。

スライディングの技術として、相手に近いほうの足を出したのは的確だったが、ボールの進む先ではなく相手とボールの間に足をねじ込む形となってしまい、結果的に相手の前進を妨げることになった。あの場合はボールを無理に刈り取るよりもボールの前に足を置いて進行を阻止した方がよかったかもしれない。

その後のPKではワトキンスが軸足を滑らせて失敗。ワトキンスが右足でキックした後、滑った左足にボールが当たっており、いわゆる「二度蹴り」となるため、PKにおける攻撃側の反則として間接フリーキックでの再開となった。

一連の判定プロセスにおいては、トゥルパン主審の落ち着きと的確な見極めが光った。ファウル判定においては際どい接触を見事に見極め、その後のセルティックの抗議では端的に自身の考えを示して抗議を抑制。PK失敗のシーンでは二度蹴りを正確に見極め…とパーフェクトなレフェリングだった。このごろはシモン・マルチニアク主審(ポーランド)に大一番を譲りがちな印象だったが、決勝トーナメントでは重要な試合を任されそうな予感が漂う。説得力のあるパフォーマンスだった。



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