VAR大活躍の裏で、ハツィダキス副審のスーパーオフサイドジャッジが光る。(プレミア第27節)
イングランドプレミアリーグ第27節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。
Referee topics
VARスペシャリストには
もったいないジレット主審。
トッテナム vs マンチェスター・シティ
(Referee: ジャレット・ジレット VAR: グレアム・スコット)
90+4分、ハーランドが強引なドリブルで進み、最後はワンツーを受けてアーチー・グレイとダンソの両センターバックと競り合いながらも突進してゴール。しかし、ジレット主審の笛が鳴り、ハンドでゴール取り消しとなった。
歓声で笛が聞こえにくく、かつ中継映像のスコア表示が0-2となったのでわかりにくかったが、当初判定は「ハンド」であった。ハーランドの左腕にボールが触れたであろうシーンは2回あり、ハーランドは得点者なので物理的に触れていれば意図は関係なくハンドだ。ゴール取り消しは妥当な判断だ。
ジレット主審としては、選手自身の体で事象が隠れがちなシーンであり、慌ててポジションを動かしたものの、時すでに遅し。とはいえ、ボールの動きとして腕のあたりに当たらないと滞空しえない状況だったので、はっきり視認できなくても腕にボールが触れたことは確信をもてたので笛を吹いたのだろう。(ハーランドは得点者なので意図が関係なかったのも奏功した)
明らかにハンドだった事象のチェックを複雑にしたのは、スパーズ側の腕に当たった可能性もあった(現に当たっている)からだ。ハーランドの左腕に最初にボールが触れたとき、グレイがハーランドの腕を抱え込むようにしているので、グレイの腕に当たったかもしれなかった。また、そのあとでボールがダンソの腕とハーランドの腕で挟み込みまれるようになった場面もあった。
結果的にはグレイの腕には当たっておらず、ダンソの腕には当たったものの、時系列的にはハーランドのハンドのほうが先…ということで、ハンドによるゴール取り消しでジャッジ確定となった。VARとしても精細な見極めが必要で難しい場面だった。
ちなみに、オーストラリア出身としてデビュー当時は大きな注目を集め、新人らしからぬ堂々とした振る舞いで評価を高めたジャレット・ジレット主審も、プレミアデビューから4年目を迎え、後輩のサム・バーロット主審などにやや押され気味の状況。
オーストラリアは実は公式戦でのVAR導入が世界で指折りに早く、ジレット氏はそこにおける初代VARの一人。それもあってかVAR担当ではある程度の地位を築いているが、走力や判断力も高いレベルにあるだけに、オリヴァー主審の次世代としてさらなる飛躍に期待したいところだ。38歳と老け込むにはまだ早い。
ウェストハム vs レスター
(Referee: アンソニー・テイラー Assistants:
コンスタンチン・ハツィダキス
, ナタリー・アスピノール VAR: マイケル・サリスバリー)
21分のソウチェクのゴールシーンは、A1のハツィダキス副審の隠れたスーパージャッジだったといえる。クレスウェルがシュートを打った時点のオフサイドジャッジは際どかったが、クドゥスとソウチェクどちらもオンサイド。かつこぼれ球を拾ったクドゥスのシュート時点でのソウチェクの位置も際どかったがこちらもオンサイド。
矢継ぎ早に起こった二つの際どいラインジャッジを冷静に見極め、ゴールを認めた。本当に素晴らしいジャッジだった。手放しで称賛に値するスーパージャッジだったといえるだろう。
マンチェスター・ユナイテッド vs イプスウィッチ
(Referee: マイケル・オリヴァー Assistants: ニール・デービス, アキル・ホーソン 4th: サム・バーロット VAR: クレイグ・ポーソン)
40分、イプスウィッチベンチの目の前で、ハッチンソンに対してドルグがタックル。リプレイ映像で見ると、ハッチンソンの脛のあたりにドルグの足裏がヒットしており、VARレコメンドによるOFR(オン・フィールド・レビュー)の末、レッドカード判定となった。
勢いがついた状態で足裏がしかも脛に入っており、骨折のリスクもありきわめて危険なプレーだ。ボールに向けて伸ばした足ではあり、ハッチンソン側もやや無理やり足を出した部分はあるが、相手への配慮を欠いた過剰な力を用いてのプレーであると捉えるべきで、退場処分は妥当だろう。
審判団としては、VAR介入があるまでノーファウル…というのはいただけない。主審からは距離が遠く(もう少し近寄ることはできたはずだが)かつ角度的に接触の深さを掴むのは難しい。A1のデービス副審かバーロット第4審が確認したかったところ。特にバーロット第4審は角度を作ってしっかり見る態勢が作れていれば、見極め可能だったようには思う。
ノッティンガム・フォレスト vs アーセナル
(Referee: アンディ・マドレー VAR: マイケル・サリスバリー)
79分、コーナーキックをファーでミケル・メリーノがヘディングで合わせたところで、手前のクリス・ウッドの右腕にボールが当たるもノーハンド。腕はやや胴体から離れていたものの、上がっておらず低い位置。ジャンプし終えたところでバランスをとる手の動きとしては自然であり、腕を広げてシュートを阻止する意図も感じない。ノーハンドで問題ないだろう。
もしハンドになる可能性があるとすれば、メリーノのヘディングがゴール方向に向かい、なおかつウッドがゴールライン上に近い位置にいた場合は、DOGSO(決定機阻止)になった可能性もある。「どこで起こったファウルか」も重要な要素になり、ゴールライン上に立ったり、シュートを打つ相手選手とゴールとの間に入ったりという場面は、そこにいること自体がリスクになりうることも認識する必要がある。
なお、もしDOGSOでPKの場合も意図的ではないので、イエローカード止まりになったはずだ。(2024-2025の競技規則改訂でいわゆる三重罰規定が守備側にとって好意的に解釈される範囲が拡大した部分)
ブライトン vs ボーンマス
(Referee: マイケル・オリヴァー VAR: マット・ドノヒュー)
10分、裏に抜け出したジョアン・ペドロがケパと交錯して倒れPK判定。完全に「誘った」形ではあるが、ケパがボールに触れていない以上は正当性はなく、ファウルを採らざるを得ない。U-NEXT解説の鄭大世氏が指摘したようにジョアン・ペドロの「クレバー」なプレーだった。
注目試合の講評
カウンターの鋭さはそのままに、
独自のポゼッションをプラス。
スロット監督の修正力と柔軟性。
リヴァプール vs ニューカッスル
前回のリーグ戦では3対3の撃ち合いを演じた両者の上位対決。今回はニューカッスルが4-4-2の守備ブロックを敷いたことで、リヴァプールがボールを保持して攻め手を伺う「堅い」展開となった。
ニューカッスルとしては、得点源であるうえにポストプレーや裏抜けで攻撃の起点にもなっていたイサクがメンバー外となった中で、リヴァプールをリスペクトする我慢の戦いを選択したのは現実的な判断だろう。ボールを奪ったら縦に速く攻め切る…という意図は序盤から明確で、スピードと打開力があるゴードンを前線に置いたこともその表れだといえよう。
おそらく同点の時間帯を長くしたかったハウ監督の目論見はあっさりと崩れ、11分にカウンター気味の攻撃を受けるとズルズル後退してしまった。今季はアンカー気味でプレーすることが多いトナーリだが、前向きの守備を得意とする一方で、スペースのケアやカバーリングという点はアンカーとしては物足りなさもある。この試合はダブルボランチではあったものの、失点シーンではトナーリが埋めきれなかったスペースをピンポイントで突かれた印象だ。
残り約20分のところで怒涛の4枚交代でギアチェンジを図ったが、その直前に再びカウンター気味の速攻から失点。2失点とも、最終的にはディアスとショボスライ、サラーとマクアリスターという個の局面打開・テクニックの能力の高さが、ニューカッスル守備陣を上回った形。致し方ない印象もある。
リヴァプールとしては、ヴィラ戦に続く2週連続のミッドウィーク開催で個々のパスのズレやトラップミスなどが散見され、ビハインドで圧力をやや高めたニューカッスルの出足に押される場面もあった。
とはいえ試合全体としては、相手が前線から来なかったことで、落ち着いて試合をコントロール。堅いブロックを前に決定機は少なかったが、自陣からの速攻で先制点を奪ったことで急ぐ必要がなくなったのは大きかった。そして、後半の中盤には素早いトランジションからカウンターで追加点…としたたかな試合運びを見せた。
カウンターの鋭さはクロップ時代を活かしつつ、ボランチを中心としてポジションを流動的にしつつ組み立てるという独自エッセンスを加えたスロット監督。フェイエノールト時代はポゼッション志向が強いようには感じたが、チーム状況・試合状況に応じた柔軟性を持っていることを着実に証明している。
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