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インテンシティで上回ったアルゼンチン。自制心を失って自滅するも、薄氷のPK勝利。(カタールW杯)

カタールW杯準々決勝。オランダ vs アルゼンチンの一戦を講評する。

オランダ vs アルゼンチン

<Referee Topics>

いつもどおりのマテウラオス主審。

ファウルとカードと笛と。

Referee:

Antonio Mateu Lahoz (Spain)

Assistant referees:

Pau Cebrián Devís (Spain)

Roberto Díaz Pérez del Palomar (Spain)

Video Assistant:

Juan Martínez Munuera (Spain)

マテウラオス主審率いる審判団のジャッジについては、以下の記事で詳述。

試合の講評

ファン・ハールの名采配。

アルゼンチンは自滅しかけたが…。

両チームともに3バック。アルゼンチンはより積極的なスタイルに。

オランダはベルフワインをスタメン起用しクラーセンをベンチに。個人的にはベルフワインは試合のインテンシティが落ちた後半投入のほうが活きると思っているが、前半からより直線的にゴールに迫ろうという狙いが見られる起用だ。

一方のアルゼンチンは決勝トーナメント1回戦のオーストラリア戦の後半で採用した3バックを継続。攻守において後方の安定感が高まり、上下動を厭わないウィングバックの運動量も活かすことができるという点で、オーストラリア戦で手ごたえを掴んだのだろう。オランダの3バックシステムに合わせて…という側面もあるだろうが、基本的には自らの強みを活かすことを考えての布陣選択には思えた。

両者ともに慎重な立ち上がり。リスク最小限のプレー選択で膠着状態に。

序盤は両チームともに手堅いプレーが目立った。特にオランダはかなり慎重で、最終ラインに対してプレスがかかったら迷いなくロングボールを選択。オーストラリアが自陣でのビルドアップのミスで失点を喫したように、アルゼンチンの前線からのプレッシングは非常に強力であり、そこでのボールロストで早い時間帯に失点というのはオランダとして最も避けたい形であった。現実主義者のファン・ハール監督らしさが滲む。

一方のアルゼンチンはオランダよりは多少積極的で、メッシ以外の選手が前線からプレッシングをかける場面が多かった。ボールを保持した際には、両ウィングが幅をとりつつ、中央ではデ・パウルやマクアリスター、そしてメッシが中間ポジションをとってボールを受けようとしたが、オランダの3バック+2ボランチの密度が高く、なかなか縦パスは出せなかった。とはいえ、「出せそうだが出さない」という場面も散見され、オランダほどではないにせよアルゼンチンもある程度の慎重さはあったように感じられた。

先制点のシーンでは、自由なメッシを捕まえきれずに最終ラインにギャップが生じた。

前半30分頃まではまさしく「膠着」という表現が似合う展開となったが、均衡が破れたのは前半35分。メッシが中央でドリブルをしながらボールをキープする間に、右ウィングバックのモリーナがダイアゴナルランで中央に侵入しフィニッシュを決めた。3バックだからこそ可能になった前進であり、これはスカローニ監督の采配が当たったと言える。

ゴールを生んだ最大の要因がメッシの精密なスルーパスにあったことは間違いないが、オランダの守備がやや後手に回った印象もある。比較的自由にポジションをとるメッシに対し、アケーがマンマーク気味に対応したものの、アケーが前進したことでファン・ダイクとブリントの間にギャップが生まれ、そこを突かれて失点したという見方もできる。

対応は非常に難しかったが、例えばアケーが最終ラインから出た場合にはボランチのデローンがポジションを下げて埋めるなど、マークとポジションを受け渡す工夫はあってもよかったか。メッシが自由にポジションをとることは想定できただけに、そこで守備陣のバランスが崩れたのは痛恨だった。

司令塔2枚を同時投入。ファン・ハール采配の凄味。

スコアが動いた後も試合の状況はさほど変わらず。オランダはボール保持の時間こそ長くなったが、遅攻ではなかなかボールを前に運べず。起点となるデパイに対して3バックと中盤がタイトに寄せたため、オランダの組み立ては「脱出口」をなかなか見つけられなかった。

そんな中で後半頭からベルフハイスとコープマイネルスを投入したファン・ハール監督の采配は非常に的確であった。両者とも司令塔タイプで、最終ラインからパスを引き出し前線に配給することに長けている。アルゼンチンのハイプレスに対する「脱出口」を担える選手を投入する采配は理に適っている。

ファン・ハールが優れているのは、司令塔タイプを2枚同時に投入したことだ。1枚を投入するだけでは、その選手がタイトなマークに遭うことで状況は好転しづらい。彼らを2枚同時に投入し、フレンキー・デヨングとともに流動的にポジションを変えながらプレーすることで、アルゼンチンのプレスの的を絞らせなかった。「司令塔タイプを入れる」までは並の監督でも思いつくが「司令塔タイプを2枚入れる」というところにファン・ハールの凄さを感じた。

さらにファン・ハールの采配は続く。ブリントに代えてルーク・デヨングを投入し、4-2-3-1に布陣を変更。最終ラインの枚数を削って前に人数をかけつつ、ロングボールを収めることができるルーク・デヨングを投入することで、クロスやロングフィードの基準点を作ってシンプルに攻めようという意図が感じられる。この意図はヴェフホルストの投入でさらに強まり、後半終了間際ではあったがクロスからのゴールという結果を生んだ。

インテンシティで上回ったアルゼンチン。自制心を失って「自滅」したのは大失態。

アルゼンチンとしては、運動量とインテンシティという点でオランダを大半の時間帯で上回った。特に攻守の切り替えの場面での差は大きく、オランダが得意のカウンターを発動する前にメッシ以外の全員が守備に参加して速やかに帰陣。フル稼働してきたオランダのガクポ、ブリントあたりが疲労を見せるのを尻目に、プレー強度の高さを保ち、試合を優位に進めることができていた。

それだけに終盤に冷静さを失ってファウルを連発したことは痛恨だった。本来ならベテランのメッシやオタメンディがチームを落ち着けなければいけなかったが、メッシは沈黙を貫き、オタメンディは自らがラフプレーを見せる始末。オランダの攻撃の最大の武器が高さである以上、セットプレーの機会を増やして最終盤で失点を喫したのは「自滅」とか表現のしようがない。

延長戦はセットプレー以外に特に見所がなかった。アルゼンチンは逃げ切り狙い、オランダはパワープレー気味に同点狙いの選手交代を行っており、両チームともに布陣のバランスは大きく崩れており、戦術的な秩序は存在しえなかった。選手個人も疲労ゆえにプレー精度と状況判断力が低下しており、効果的なプレーはほとんどなかった。

PK戦に関しては…エミリアーノ・マルティネス。この言葉しか見つからない。



本記事は参考情報として提供しており、内容の正確性・最新性について保証するものではありません。

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