シモン・マルチニアク主審は、欧州トップの地位を不動のものにしつつある。(CL第7節①)
チャンピオンズリーグのMatchday7。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。
Referee topics
議論を呼ぶマッケリー判定だが
一定の妥当性はある。
ベンフィカ vs バルセロナ
(Referee: Danny Makkelie VAR: Rob Dieperink)
11分、エリア内で仕掛けたバルデがベンフィカ㊹と接触して転倒。当初はノーファウル判定だったが、VARが介入。ダニー・マッケリー主審(オランダ)がOFR(オン・フィールド・レビュー)を行い、ファウルでPK判定となった。
リプレイ映像で見ると、ベンフィカのトマス・アラウージョがバルセロナのバルデの足を踏んでいることがわかる。初見の印象としては、バルデがあえてボールを大きく蹴り出したうえで、自分から倒れ込んだ…というようにも見えた。マッケリー主審としては、バルデの倒れ方の印象が強く残りノーファウルに傾いたのかもしれない。
29分、ケレム・アクトゥルコールとシュチェスニーの接触で今度はベンフィカにPK。これも状況としては11分のPKと似通っており、シュチェスニーが遅れて突っ込んだところで、アクトゥルコールが飛び上がるようにして倒れており「大袈裟」感はあったが、接触があったのは間違いない。マッケリー主審としては、今度はオーバーリアクションに乱されることなく接触の有無を冷静に見極め、PK判定を下した。
76分には本日3度目のPK。エリア内に斜めに走り込んだヤマルに対し、カレーラスが肩に手をかけて前進を阻止。明らかなホールディングであり、マッケリー主審としては腕の動きがしっかり見える位置にポジションをとり、冷静に見極めた。
同点で迎えた最終盤には、まずレアンドロ・バレイロがゴール前で後ろからの接触を受けて倒れるもノーファウル。そのままバルサのカウンターに繋がり、ラフィーニャが決勝点をゲット。判定に抗議し第4審に詰め寄ったカブラル(ベンチ)にレッドカードが提示されるなど、騒然とする中での試合終了となった。
バレイロが倒れたシーンは後ろからフェルミン・ロペスに「追突」されており、プッシングでファウルを採られる可能性はあった。フェルミンが手を出していない(体ごとぶつかった形である)ことはノーファウル判定を下す大きな要素になったはずだ。そこまで強い接触ではなく、どちらかといえばバレイロが横から入ってくる形だったこともふまえると、個人的にはノーファウル判定を支持したい。
マッケリー主審はエリア内に深く入りながら、絶好の距離&角度で事象を見ており、自信をもって判定を下していた。事実(接触部位、程度)はマッケリー主審とVARで認識の相違はほぼなかったはずで、主審の判断を覆す映像証拠はない。主観的な判断の領域が争点なので、VARとしては主審の説明と映像を照らし合わせて、主審の判定をフォロー…以外の選択肢はほぼなかった。
アトレティコ・マドリード vs レヴァークーゼン
(Referee: Davide Massa VAR: Aleandro Di Paolo)
23分、ムキエレが弾んだボールを持ち出したところで、バリオスのタックルが入り転倒。ダビデ・マッサ主審(イタリア)は当初イエローカードを提示したが、VARが介入。OFRの結果、
バリオス足裏が結果的にムキエレのふくらはぎの辺りに接触しているのは間違いない。ボールに向けて伸ばした足だったがボールに触れず、足がそのまま残ったところにムキエレが前進してきて足裏が接触…という形。足が比較的高く上がった状態で足裏が接触しているとはいえ、そこまで強い力がかかったようには思えず、個人的にはイエローカードで留める判断も一定の妥当性を持っていたように感じる。
VARとしては、このイエローカードを「明白な間違い」として介入するのは難しいはずで、あるとすれば「見逃された重大な事象」のほうだろう。推測にはなるが、マッサ主審が接触部位を明確に認識できていなかった(足裏が入ったことを確認できておらず、遅れてタックルが入ったことしか認識できていない)場合には、「足裏が入っていますよ」ということでVARはレビューを勧めるのが妥当。今回の介入はこのパターンだった可能性が高い。
76分、ジュリアーノ・シメオネのドリブルを止めたインカピエが2枚目の警告を受けて退場に。上半身をショルダーチャージに見えるが、ジュリアーノが左足をインカピエの前に「ねじ込んだ」ことで、下半身は後方から接触する形になっている。私個人の見解もファウルであり、ファウルを採ったなら接触の強度や質には関係なくSPA(チャンス阻止)に該当するので自ずとイエローカードだ。
パリ・サンジェルマン vs マンチェスター・シティ
(Referee: Szymon Marciniak Assistants: Tomasz Listkiewicz、Adam Kupsik VAR: Tomasz Kwiatkowski)
45分、PSGがカウンターからゴールを奪うもVAR介入によりオフサイドで取り消し。A2のアダム・クプシク副審としては、PSGの縦に速い攻撃に対して若干出遅れてしまい、オフサイドジャッジの瞬間にラインから数歩後れを取ったのは悔やまれる。とはいえ、「どっちの足が出ていたか」という際どい見極めであり、正しいポジションでも見極め難度はMAXだった。
90+3分、中盤での競り合いでこぼれたボールがゴンサロ・ラモスのもとへ。そのままシュートに持ち込んで決めたところでA1のトマシュ・リストキエヴィチュ副審の旗が上がってオフサイド。
ゴンサロ・ラモスがオフサイドポジションにいたことは確かなので、ポイントになるのは「ゴンサロ・ラモスにボールを届けたのが誰なのか(ラストタッチが誰か)」になる。これを見ることができたのは位置関係的にはおそらく主審のみ。当初マルチニアク主審はPSG側のボールタッチだと認識してオフサイド成立という判断を下したのだろう。
ただ、映像で見るとボールに触ったのはグヴァルディオルのみ。結果としてオフサイドは成立しない。この場合は「どちらがボールに触れたか」という事実のみが争点なので主審によるOFRなしでのジャッジ変更になった。もしグヴァルディオルが触ったあとにPSG側の選手が僅かでも触れていればオフサイド…なので、VARチェックが慎重に行われ時間を要したのはやむを得ないところだろう。
ちなみに、シモン・マルチニアク主審率いるポーランド審判団は、PSGvsアトレティコ、スポルティングvsアーセナル、アタランタvsレアルと、注目カードを連続で担当。UEFAからの厚い信頼は揺るぎないものになっており、マルチニアク主審は押しも押されぬヨーロッパNo.1レフェリーとしての地位を確立しつつある。
リヴァプール vs リール
(Referee: Felix Zwayer Assistants: Robert Kempter、Christian Dietz VAR: Bastian Dankert)
34分、サラーのゴールシーンでは、リヴァプールのボール奪取の場面でリールがファウルを主張。デイヴィットに対するツィミカスのチャレンジはやや後方から…であったが、ボールをしっかり絡めとっており、ボールを触ったあとにデイヴィットの足に絡んでいる。正当なタックルであり、フェリックス・ツヴァイヤー主審(ドイツ)の見極めは妥当だ。
59分、マンディが2枚目の警告を受けて退場に。2枚目の警告はルイス・ディアスの動き出しに後手を踏んで、明確に止める意図をもって足を出している。本人もイエロー覚悟のプレーだ。
34分の1枚目の警告は前述のデイヴィットへのファウルを主張したことによる異議のイエロー。主将以外からのファウルアピールや抗議に厳しいスタンスを採っている今季のカード基準からすると、こちらはもったいない(しほぼ意味がない)行為であった。
後半アディショナルタイム、ヌニェスがゴールネットを揺らすもオフサイド。ラインから体一つ出ており見極めは一見容易に思えるが、終盤での縦に速い攻撃という場面で、副審としてもフィジカル的に厳しい状況。走力を発揮してラインをキープしたA1のロベルト・ケンプター副審は称賛されてもよいだろう。
ライプツィヒ vs スポルティングCP
(Referee: Manfredas Lukjančukas Assistants: Mangirdas Mirauskas、Vytenis Kazlauskas VAR: Daniele Chiffi)
32分、ライプツィヒが大きなサイドチェンジから、左サイドのラウムがトラップしてそのまま左足を振りぬいてゴール。ここでVARが介入し、マンフレダス・ルクヤンチュカス主審(リトアニア)がOFRを行った結果、オペンダのオフサイドを採ってゴールは取り消しとなった。
ルクヤンチュカス主審、A2のヴィテニス・カズラウスカス副審ともにゴール後すぐにゴールを認めるジェスチャー・動きを見せているので、おそらくオペンダがオフサイドポジションであるという認識がなかった可能性が高い。(もしあったらゴールを認める前に「オペンダはプレーに関与したか」という主審・副審の擦り合わせがあったはずだ)
ラインジャッジ自体はかなり際どいが、オペンダは腕を広げて相手競技者の進行を阻止しようとしており、ファウルではないが「相手競技者に影響を与えている」と捉えるのが妥当だ。映像を見ればほぼすべての審判員がオフサイドを採るであろうシーンだった。
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