産みの苦しみを味わうガンバ。グランパスの高揚感とレイソルの停滞感。(J1第4節)
J1リーグ第4節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。
Referee Topics
出遅れたら「近づく」ことを優先。
上田主審の適切な判断。
湘南 vs 京都
(主審:川俣秀)
川俣秀主審がJ1デビュー。1級審判員登録は2012年で、足かけ10年ほどでのJ1デビューとなった。J3、J2で主審を務めつつJ1でもVARや4thとして経験を積み、今年の元日の大学サッカー選手権の決勝なども担当しており、堅実にキャリアを積み上げてきた印象だ。
デビュー戦は大きな問題は特に起こらず、滞りなく試合を終わらせたといえよう。現在40歳なのでやや遅咲きとも言えるだろうが、家本氏や村上氏、佐藤氏が抜けた審判界においてのご活躍を心から期待したい。
新潟 vs 川崎F
(主審:飯田淳平)
前半22分、アルビレックスの先制点のシーンでは、飯田主審が素晴らしいアドバンテージ適用でゴールを演出した。ボール奪取の局面での家長のタックルは深めでついホイッスルを吹きたくなるところだが、我慢して伊藤のシュートにつなげた。見事なレフェリングであった。
FC東京 vs 横浜FC
(主審:上田益也 VAR:荒木友輔)
72分、ディエゴ・オリヴェイラがエリア内で倒れるもノーファウル判定。リプレイ映像で見ると、ンドカのタックルが遅れ気味に入っているものの強い接触はなく、ディエゴ・オリヴェイラが足を畳んで倒れた(いわゆる「ダイブに近い)ように見える。ノーファウル判定は十分にサポートできるし、VARの介入がなかったのも妥当と考える。
厳密に細かく見れば微かな接触はあったかもしれないが、プレーは続けることができたはずだし、一サッカーファンとしてはかわしてシュートまでいってほしい場面だ。ディエゴ・オリヴェイラとしてはシュートが決まっていればハットトリックであり、倒れに行ったように見えるのは残念だ。むしろ、シミュレーションをとられなかったことに感謝したほうがよいかもしれない。
上田主審としては、FC東京の長距離の縦パスが通ったことで局面が一気に進みやや出遅れた印象。角度を確保するよりも争点に近づくことを優先してスプリントをかけ、なんとか見極めに足る近さまでたどり着いた印象だ。事象の見極めには距離に加えて角度も重要だが、出遅れた以上は「近づく」ことを優先した判断は適切だったと思われる。
C大阪 vs 鳥栖
(主審:今村義朗 VAR:吉田哲郎)
鳥栖の長沼が2枚の警告を受けて退場に。49分のプレーはボールを奪われた局面でやや無謀にスライディングにいっており、ラフプレーでの警告は異論ないだろう。89分のほうは接触自体はそこまで強くなかったが、完全にかわされかけたところで相手をホールドして阻止している。カピシャーバがドリブルで中央に切り込めればチャンスとなった局面なので、SPA(チャンス阻止)での警告はやむなし。2つの警告ともに一定の妥当性はあったと考える。
鹿島 vs 福岡
(主審:山本雄大 VAR:榎本一慶)
鹿島の佐野が2枚の警告を受けて退場に。山岸の前進をホールディングで止めた53分の警告はやむなしとして、やや厳しかったのは15分の1枚目の警告だろう。ルキアンに遅れてチャレンジし足首あたりを削る形にはなったが、接触面としてはそこまでクリティカルではなく、注意で留める判断もありえたか。とはいえ、遅れてチャレンジした印象は悪く、ラフプレーでの警告は許容できる範疇ではあるので、山本主審の判断も十分に受け入れられる。
いずれにせよ、53分のホールディングは1枚警告をもらった状況でやるべきプレーではない。自分がボールを失ったこともあり、咄嗟に手が出てしまったのだとは思うが、その後の試合展開に大きく影響を与えるプレーとなった。ここまで攻守に効いていた佐野だが、アンカーは判断力が肝になるだけに、この経験を糧としてさらに成長してほしいところだ。
G大阪 vs 広島
(主審:池内明彦 VAR:谷本涼)
後半アディショナルタイム、ネタ・ラウィがベン・カリファを倒してPK。自陣ゴール前でのボールロストに際し、慌てて寄せたところでベン・カリファの足を巻き込んでしまった形だ。相手の逆をとってファウルを誘発するベン・カリファ側の「巧さ」はあったが、ファウルであることは明白だ。
池内主審としては、こぼれ球のシュートがゴールになる可能性もあったため、いったんウェイトして状況を注視したうえで、PKとジャッジした。結果的に森島のシュートがゴールネットを揺らしているが、ホイッスルが鳴ったことで東口がプレーを止めており、「笛を吹かなければよかった!」とはならないだろう。焦って笛を吹かなかった判断は適切であった。
なお、このシーンに関してはベン・カリファの足裏がネタ・ラウィの脛あたりにヒットしているようにも見えるので「ファウルが逆なのでは?」という意見もあるようだが、時系列でいうとネタ・ラウィのチャレンジのほうが先であり、ネタ・ラウィ側からの接触により跳ね上がった足裏が結果的にヒットしたように見える。VARが介入しなかったのも納得できる。
各試合の講評
守備が機能しないレイソル。
ネルシーニョ監督は限界か?
新潟 vs 川崎F
メンバーを固定して負けなしを継続してきたアルビレックスに対し、フロンターレは最終ラインに怪我人が相次ぎ流動的な人選に。さらに今節では大島も負傷交代となり、まさに火の車状態だ。レアンドロ・ダミアンが長期離脱となっている前線も含め、開幕4戦で出ずっぱりとなっている選手は明らかに動きが重く、サポートが足りないがゆえに巧みなパスワークは鳴りを潜めた。加入2年目となった瀬古あたりは自ずと出番が増えそうで、奮起に期待したいところだ。
一方のアルビレックスはフロンターレのお株を奪うパスワークを見せた。伊藤を中心とする2列目はある程度の流動性を保ちつつ、相手のギャップで巧みにボールを引き出していたし、トーマス・デンと舞行龍ジェームズの両センターバックから効果的な縦パスが入っていた。ポジションバランスがとれているときのパスワークは見応え十分だ。
中盤の運動量(スライド)が生命線となるため、後半にややパフォーマンスが落ちる点は今後に向けた課題だが、今節では新加入のダニーロ・ゴメスもデビュー。太田と三戸が好調を維持する中で、そこを脅かすような活躍を期待したいところだ。
柏 vs 名古屋
レイソルはグランパスお得意のカウンター攻撃を止めきれず3失点で完封負け。エースの細谷は好調を維持しているものの、3-4-2-1の陣形が間延びする場面が多く、対カウンターの守備という観点で大きな問題を抱えている。
前線の3枚は精力的なプレッシングを行うものの、最終ラインがそれに応じて押し上がらないのでボールを奪えず、結果的に後退を余儀なくされるシーンが目立つ。マテウス・サヴィオや小屋松など能力の高いアタッカーを擁しているので攻撃はある程度の即興性で質を担保できるが、守備面では足並みの乱れが目立ち、組織的な守備ができていない点が主たる敗因であろう。
開幕4戦で勝ちなしとなり、内容も伴わないとなると、自ずとネルシーニョ監督への風当たりは強まるであろう。名伯楽も御年72歳で戦術のアップデートには苦慮している印象もある。能力が高い選手は揃っているだけに、戦術家タイプの監督を招聘して再建を図るのも一手かもしれない。
一方のグランパスはフィッカデンティ時代から積み上げた堅守を維持しつつ、ユンカーという極上のストライカーの加入により攻撃パターンも定まってきた。ボールが収まるうえに裏抜けもできるユンカーがいることで、マテウスや永井もプレーエリアが拓けるという好循環で、特にカウンターの局面では三者の推進力はJ1屈指と言える。ユンカーが健康体を維持すれば、今季のグランパスは久々の優勝争いに手が届く可能性を持っている。
G大阪 vs 広島
ガンバとしては少なくとも引き分けには値する試合内容だったが、終了間際に自陣でのパスワークでミスが発生してPKを献上し痛恨の敗戦となった。まさにポゼッションスタイル導入の産みの苦しみの象徴的な事象であり、サッカースタイルの変更のうえでは必要犠牲とは言えるが、非常にもったいない失点であった。
勝利したサンフレッチェで気になるのは満田の起用法だ。川村の好調もあってここまでは右ウィングバックでの起用が多いが、タイミングのよい飛び出しや制度の高いパス・シュートといった満田の良さが出るのはやはりシャドーだろう。運動量自体は豊富だがスピードはウィングバックとしてはやや物足りず、守備面でのプレスバックは大きな負担になっている印象もある。
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