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「過剰防衛」の松木玖生。肘を張って振る必要はなく、レッドカードやむなし。(J1第16節)

J1リーグ第16節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。

Referee Topics

振りほどこうとしたとはいえ、

肘を振る必要性はなかった。

浦和 vs 鹿島

(主審:アンディ・マドレー

副審:渡辺康太、八木あかね VAR:谷本涼)

審判交流プログラムの一環として、今月はイングランドプレミアリーグからアンディ・マドレー主審が来日。初担当となった今節は、現役国際審判員の渡辺康太と長く国際副審として活躍した八木あかねが脇を固め、VARには昨年から国際主審となった谷本涼が入った。

4月に来日したトーマス・ブラモールはプレミアリーグ担当1年目の若手だったが、今回来日したアンディ・マドレーは38歳の中堅。36節のアーセナルvsブライトンをはじめ、それなりのビッグマッチも担当しており、国際主審としてW杯予選やCL・ELにも派遣されている「現役バリバリ」のレフェリーだ。

個人的な評価としては、中央寄りのポジショニングで事象を見極めきれなかったり、要所で大きな判定を避ける傾向が見られるなど「イマイチ」ではあるが、プレミアリーグで一定の評価を得ている審判員であることは間違いなく、Jリーグの場で今後どのようなレフェリングを見せるか注目したい。

FC東京 vs 横浜FM

(主審:清水勇人 VAR:岡部拓人)

67分、松木の肘がマルコス・ジュニオールの顔に入った場面でVARが介入。清水主審がOFR(オン・フィールド・レビュー)を行い、松木にレッドカードが提示された。

松木の肘がかなりの勢いでマルコス・ジュニオールの顔面にヒットしているのは確かで、マルコスがは鼻骨骨折の可能性も大いにあった。その行為のみを切り取るなら間違いなくレッドカードだろう。

情状酌量の余地があるとすれば、松木にボールを奪われたマルコス側が絡みつくように松木に追いすがり、それを振り払おうとした結果である…という点かもしれない。とはいえ、あの状況で「肘を張り出して腕を振る」必要があったとは言えない。腕を広げるのは正当化できたとしても肘を張る必要はなかった。

言うなれば、「正当防衛」ではなく「過剰防衛」であり、退場処分はやむを得ないだろう。DAZN解説の佐藤寿人氏は「体を入れていい形でボールを奪った」点を強調してレッドカードの判定に疑問を呈していたが、体を入れてボールを奪ったことと結果的に肘を突き出して振ってしまったことは別で考えるべきだと思う。

清水主審としては、当初はノーファウルというジャッジを下している(だからこそプレーが続いている)。接触自体を見逃がすことはほぼありえないので、あるとすれば「肘ではなく手が当たっただけ」と見えたのかもしれない。とはいえ、かなり近い位置にいたはずなので、VARなしでジャッジを下せなかったのは疑問が残る。(このあたりは本人に判断を聞いてみないとわからないが)

なお、この事象は「映像を見れば見るほど悪質に見える」タイプの行為だ。もちろん、VARのレビュー映像は前後の流れも含めて確認しているものの、スローで見ると顔に肘がクリティカルヒットした印象が強まっていく。映像を見たら大半の審判員がレッドカードという判定を下すであろう。(その意味でも、VARなしでジャッジを下してほしかった)

湘南 vs 新潟

(主審:山下良美 副審1:坊薗真琴 副審2:手代木直美 VAR:中村太)

開始早々1分、千葉のハンドでPK。クロスが来ることは明白で、あれだけ腕が広がっているとハンドを採られるのは当然だろう。事象発生から笛が鳴るまでやや間があったことから考えると、山下主審の角度からは事象がはっきりと見えず、A1の坊薗副審からの助言があったと推察される。

小野瀬のゴールシーンはVARのOR(オンリー・レビュー)によりオフサイド判定が取り消されてゴールが認められた。アルビレックスの守備ラインが大きく崩れたところから徐々に戻っていき、そのタイミングで鋭い縦パスが入る…という副審のラインジャッジとしてはそれなりに難度が高い場面であった。VARレビュー映像の3Dラインを見ると「こんなにズレているのに!」と思うかもしれないが、見極め難度はそれなりに高かった。

広島 vs 京都

(主審:西村雄一 VAR:池内明彦)

93分、川村がドリブルで独走しゴールを決めたシーンでは、川村の進路を空けたドゥグラス・ヴィエイラの行為が気になるところ。川村のドリブルに合わせて京都のディフェンダーをブロックしているので、もし彼がオフサイドポジションであれば「相手競技者を妨害する」に該当すると考えられる。今回はVARが介入しなかったということは、オフサイドポジションではなかったということだろう。

なお、オフサイドポジションに関する定義としては「ボールが味方競技者によってプレーされたか触れられた瞬間にオフサイドポジションにいる(

サッカー競技規則 第11条 オフサイド

より」とされているので、今回の場合は川村のボールタッチ時点でのポジションで判断することになる。つまり、川村がボールに触れるたびに映像を止め、その時点でオフサイドポジションにいるかどうか…を確認する作業が必要だったはずで、VARのチェック作業はかなり大変だったと推察される。

各試合の講評

守備の意思統一と攻撃の再構築。

新潟は、伊藤涼太郎の退団を

浮上のきっかけに。

湘南 vs 新潟

アルビレックスは今節こそドロー決着となったものの、「点は取れるがそれ以上に失点が多い」という状態が続いている。守備陣は負傷者が続出しており日替わり状態でカバーリングの距離感やマークの受け渡しなどの面でのミスが目に付く印象だ。

今節も、前節のガンバ戦同様に開始早々に失点。個人のミスという側面はあるものの、自陣深い位置に侵入され、ほぼフリーの状態でクロスを上げられたのは組織としての問題も大きい。前から行くのか、引いてブロックを固めるのか…というあたりの意思統一がなされず、中途半端なプレッシングにいってしまった印象だ。

さらに、攻撃の絶対的な軸である伊藤涼太郎のベルギー移籍が決定的との報道が出ている。伊藤の代役は事実上不在であり、攻撃戦術も見直しが必須。伊藤なしでは現行の中央突破を軸にした攻撃は成り立たないので、サイド攻撃への移行なども考慮せねばならないだろう。

例えば、調子を上げつつあるグスタヴォ・ネスカウ、ダニーロ・ゴメスの両外国人を活かすのは一手。前者のボールキープを起点にして、サイドのスペースでダニーロ・ゴメス(もしくは三戸)が仕掛ける形が決まれば、チャンスを十分に作れるはずだ。

勝ち星に恵まれない中で大黒柱が流出…という正念場になりそうだが、新潟対策が進みつつある現行の戦術をアップデートするチャンスと捉えるしかない。松橋監督の手腕が問われる。



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