「大怪我をしたからレッドカード」ではない。齊藤未月の回復を祈る。(J1第24節)
J1リーグ第24節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。
Referee Topics
VAR不介入には
運用フロー上の課題も。
一概に審判団の責任とは言えない。
神戸 vs 柏
(主審:今村義朗 VAR:小屋幸栄)
前半22分、神戸のフリーキックの場面で、こぼれ球に齊藤未月が反応。齊藤がシュートを打とうとしたところに、柏の2選手(ジエゴと戸嶋)がブロックに入り激しく交錯した。結果的に、齊藤はこの場面で負傷交代となった。
判定はノーファウルでVARの介入もなかったが、ゴール裏からのリプレイ映像で見ると、シュートブロックに入った戸嶋とジエゴはどちらもシュート後の齋藤に突っ込んでしまっており、二人でサンドするような形になっている。(結果論ではあるが、この「サンド」が大怪我の原因となった)
映像がブレていたり、ポストで隠れていたりなどVARにとって不運な面はあるものの、特にジエゴは足裏を高く上げてシュートブロックにいき、そのまま齋藤自身に突っ込んでいるので、ラフプレーでレッドカードが提示されるべきであったと考える。もちろん、ジエゴにも戸嶋にも悪意があったわけではないとは思うが、結果的に安全への配慮を著しく欠いたプレーになったことは確かで、少なくともイエローカードは提示されるべきであった。
VARとしては、カメラアングルのブレやゴールポスト、選手との重なりなどにより、接触の詳細を明瞭に示す映像を見つけられず介入できなかったと考えられる。ただ、事の重大さをふまえると、断定はできないまでも接触の詳細を主審が映像で確認したほうがよかったようには思われる。このあたりはVARの運用フロー・プロセスの課題も見えたと言えよう。
なお、「大怪我をしたからレッドカード」というわけではないことは認識しておく必要がある。大怪我はあくまでも「結果」であり、そこには、二人のタックルが重なったという「不運」な面が含まれている。もちろん、負傷の程度がどのくらいかという点は考慮すべき材料の一つではあるが、それだけが判断基準にはならない。今回の場合は、「結果的に大怪我をした」ではなく「怪我のリスクが予見できるにもかかわらず配慮を怠りラフプレーを行った」ことが問題なのである。本質を見失ってはいけない。
このシーンはのちに齋藤が全治1年の大怪我と発表されたこともあり、サッカー界でも大きな議論を呼ぶこととなり、神戸の三木谷オーナーをはじめとする神戸関係者からは判定の是非を問う意見が噴出。後日、審判委員会の公式見解として「レッドカードにすべきであった」というリリースが発表された。
以下の記事では審判委員会からの発表について詳しく記載されている。審判団の意思決定プロセスなどについても詳しいので、ぜひご参照いただきたい。
鹿島 vs 鳥栖
(主審:谷本涼 VAR:西村雄一)
77分、エリア内で富樫に藤井が倒されてPK。鋭い切り返しに対して逆モーションとなり、咄嗟に出した足がトリッピングの形になってしまった。富樫が勢いよく戻ってきたのを見越して、藤井があえて足を残したようにも見え、「誘った」面もあるだろうが、ファウルであることは明らかで、ほとんど議論の余地はない。
ロングカウンターの場面ではあったが、谷本主審は早めにスプリントをかけて展開に付いていき、間近の位置でジャッジを下した。展開を予測したポジショニングと高い走力に裏打ちされた見事なレフェリングであった。
京都 vs 札幌
(主審:御厨隆文 VAR:清水勇人)
37分、裏に抜け出した原と飛び出してきた大谷が衝突。大谷のファウルを採ってPK判定となった。原が先にボールに触れており、大谷はボールに向かってはいるもののボールに触れられず。ファウルであることは明らかだ。
なお、この場面では大谷にはイエローカードが提示された。状況としてはDOGSO(決定機阻止)と言えるが、いちおうPA内でボールにチャレンジしようとした結果ではあるので、DOGSOの場合でも一段階下がって警告となる。ただ、今回の場合はかなりの勢いをもって衝突しているので、ラフプレーでの警告と考えるのが妥当だろう。(ラフプレーとSPAのどちらにも該当する場合には、より悪質なラフプレーが事由となる)
つづいて前半アディショナルタイムには、VARレコメンドによるOFR(オン・フィールド・レビュー)の末、原のハンドを採って今度は札幌にPKが与えられた。
ボールが手に当たっているのは映像で見ると明らかであり、あとは腕の位置が自然かどうかという判断になる。そこまで不自然ではないものの、胴体からはやや離れていること、そしてボールが当たる瞬間にボールの方に手が若干動いているように見えることをふまえると、ハンドというジャッジは個人的には妥当だと考える。
ただ、露骨にボールを腕で扱おうとしたというわけではなく、腕の位置も胴体から大きく離れているわけではなく、また至近距離で相手がボールを蹴っており予測が難しかったという点を重視するなら、ノーハンドという判断もありえるシーンではあった。個人的には御厨主審の判断に賛成だが、いわゆる「グレー」な事象であり、どちらの判断も一定の妥当性を持つシーンだと言えよう。
G大阪 vs 湘南
(主審:岡部拓人 VAR:上田益也)
56分、山本のクロスがキム・ミンテの腕に当たるも当初はノーファウル。約1分後にVARが介入し、OFRの末、PK判定となった。
リプレイ映像で見ると、キム・ミンテの腕が胴体から離れてやや広がっていることがわかる。一方で、腕に当たる前に右の太もものあたりに当たっているようにも見えるが、ここが本当に当たっているかどうかは、映像で見ても非常に微妙なところだ。とはいえ、クロスが自分のほうに飛んでくることは明らかな場面で、多少とはいえ腕を広げてしまったのは軽率で、そこにボールが当たればハンドを採られるのはやむを得ないだろう。
岡部主審としては角度的にこの事象を見極めるのは非常に困難で、A2の西村副審としても山本の体と被っており距離的にも見極めは難しい。審判泣かせのシーンであった。
各試合の講評
長倉が新潟の攻撃を活性化。
今後の活躍に期待。
福岡 vs 新潟
前半の1点を守り抜いたアルビレックスが3試合ぶりの勝利。2点を先行された前節の反省を活かし、スタメン復帰したマイケルジェームズを中心に守備陣が踏ん張りを見せた。目下の目標である残留に向けて明るい兆しが見えた一戦だと言えよう。
攻撃面では新加入の長倉の活躍が際立っている。左サイドを起点にしながら、トップ下の三戸とポジションを入れ替えて中央に侵入する場面も多い。伊藤涼太郎の退団後に欠けていた「流動性」が生まれており、テンポのよいショートパス交換が蘇ってきた。ドリブルでの仕掛け、意表を突いたループシュートなどプレーのバリエーションも多彩で、攻撃の活性化に寄与している。今後の活躍に期待だ。
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