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同点であれば有効打だったフレッジ投入。逃げ切りの局面では最悪の失策に。(カタールW杯)

カタールW杯準々決勝。クロアチア vs ブラジルの一戦を講評する。

クロアチア vs ブラジル

<Referee Topics>

オフサイドの新解釈も問題なし。

落ち着きが際立つ。

Referee:

Michael Oliver (England)

Assistant referees:

Stuart Burt (England)

Gary Beswick (England)

Video Assistant:

Pol van Boekel (Netherlands)

以下の記事にて詳述する。

試合の講評

リスクを抑えて勝利目前。

悲劇を生んだフレッジ投入。

ブラジルの「孤立」したウィングを囲みに行ったクロアチア。

序盤は大方の予想通りでブラジルがボールを保持して試合を進める展開となった。とはいえクロアチアも積極的かつ効果的なプレッシングを行ったので、ブラジルがなかなか前進できない場面も多くなっていた。

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で述べたように、ブラジルはサイドバックが低い位置に留まるため、ウィングは孤立しやすい。両ウィングのハフィーニャとヴィニシウスが突破力に優れているからこそ「孤立」はむしろ好都合なのだが、クロアチアはここの守備に人数をかけることでウィングからの状況打開を阻んでいた。

両サイドのペリシッチとパシャリッチは相手サイドバックにプレスをかけつつ、縦のボールが入ったら速やかにプレスバック。プレスバックが間に合わないときにはブロゾビッチやコバチッチがスライドし、サイドバックとともに2対1の状況を必ず作るようにしていた。

中央のスペースを捨ててサイドにカバーに行くことになるので、中央のネイマールやパケタはややフリーになる場面もあったが、そこへのパスコースを限定することで中央への侵入やサイドチェンジを許さず。中盤の豊富な運動量があるからこそ成り立つ戦術ではあったが、インテンシティが高かった序盤には効果的に機能していた。

▼(参考)ブラジルのサイドバック・ウィングの関係性について

左サイドバックのダニーロは「偽サイドバック」に位置に。ヴィニシウスを活かす狙いが。

ブラジルとしては、連戦で疲労も溜まっているクロアチアが積極策に出てくることはやや予想外だったかもしれない。「いつもどおり」のサイドを起点にした組み立てがやや手詰まり感がある中で、前半15分にはモドリッチのプレスを受けてカゼミーロが自陣でボールを失うなど「らしくない」場面も発生。想定よりも前掛かりに来たクロアチアに対して、自陣でのビルドアップには手こずっていた印象だ。

ブラジルの組み立てで特徴的だったのは、左サイドバックのダニーロが中央寄りのポジションを取っていた点だ。ビルドアップの際にはアンカーのカゼミーロとほぼ横並びになっており、いわゆる「偽サイドバック」(バイエルンのラーム、シティのカンセロなどに代表されるボランチのような立ち振る舞い)の役割をこなしていた。

この狙いとしては、大きく2つ考えられる。

1つ目はプレッシングで狙われがちなアンカーのカゼミーロをフォローすること。センターバックからアンカーへのパスは相手のプレッシングで狙われやすいポイントだが、すぐそばにダニーロが立つことでプレッシングの的が絞りにくくなる。また、万が一カゼミーロがボールロストした際にも、すぐにダニーロがバイタルエリアをフォローできるというメリットもある。

そして2つ目は、左ウィングのヴィニシウスにスペースを与えることだ。前述のようにクロアチアが「サイドで囲い込む」守備をしてくる中で、両ウィングの突破力を活かすためにはスペースが必要だ。そこでダニーロが中央寄りのポジションをとって相手右ウィングのパシャリッチを引き付け、ヴィニシウスが相手SBのユラノビッチとスペースがある状態で1対1になれる状態を作ろうとしたと考えられる。

特に2つ目の狙いについては、序盤にチアゴ・シウヴァからのロングフィードが通るなど、チームとして明らかに狙っていた形だろう。なかなかボールを触れず下がってきたネイマールがヴィニシウスへのパスコースを塞いでしまう場面が幾度か見られたのはややもったいなかったが、ネイマールがバイタルエリアの中間ポジションを取れていれば、ヴィニシウスが1対1で仕掛ける場面が作れていた。

クロアチアのパス回しは脅威にはならず。リスクを抑えたチッチ監督らしい振る舞い。

前半の中盤以降は両チームともにインテンシティがやや落ちたため、膠着した展開に。クロアチアがボールを保持する展開にはなっていたが、ABEMA解説の槙野智章氏が指摘したように「ブラジルのブロックの前でボールを回しているだけなので、そこまで脅威ではない」状況であった。

ブラジルとしてはコンディション面で優位に立っているのは明らかであり、後半ないし延長戦での消耗戦になってもOK…という意識はあっただろう。難度の高い縦パスや強引な突破はほとんど見られず、帰陣も非常に早かったので被カウンターのリスクはほとんどなかった。ややバタバタしたのは立ち上がりくらいで、それ以降はチッチ監督らしいリスクを最小限に抑えたサッカーで時を進めていた。

劣勢を跳ね返したリバコビッチとグヴァルディオル。

後半の中盤以降はブラジル側にも疲労の色が見られ、試合はより一層の膠着状態に。クロアチアはなかなか攻撃に出ることはできず、徐々に中央の守備でもマークが遅れ始めたことで、ブラジルにいくつかの決定機が生まれていた。

殊勲に値するのはゴールキーパーのリバコビッチだ。シュートへの寄せが早く、思い切った飛び出しでパケタやネイマールのシュートコースを塞いだ。彼のファインセーブがなければ、日本戦でのPKストップで一気に注目を浴びたが、中距離のパスも用いたビルドアップスキルも水準以上であり、今大会で大きく評価を上げた選手の一人だ。

また、今大会最注目の若手の一人であるグヴァルディオルはこの試合でも堂々たるパフォーマンス。攻撃面でビルドアップスキルやドリブルでの持ち上がりを見せるシーンは限定的だったが、対人守備ではほぼ負けなしでポジショニングも正確。疲れもあって後半は綻びを見せた先輩ロブレンに対して、ほぼノーミスの守備でクロアチアの堅牢を支えた。

先制点を生んだロドリゴの中央への侵入。ネイマールの鮮やかな個人技の裏で一役買った。

攻撃がなかなか活性化しなかったブラジルではあったが、延長前半アディショナルタイムに待望の先制点。もちろんネイマールの個人技とパケタのポストプレーが主要因ではあるが、ロドリゴが中央寄りのポジションでパスワークに絡んだこともゴールにつながった。

ロドリゴはサイドに張り出して個人で打開するタイプではないので、中央寄りでプレーすることで彼の強みは活きる。本来なら左サイドバックが外のレーンを使い、ロドリゴは中に入ってプレーさせたかったが、左サイドバックが本職ではないダニーロだったのでそのような攻撃の形は限定的だった。しかし、先制点のシーンではダニーロが左サイドの高い位置をとっており、それによって中央に入り込んだロドリゴが比較的フリーになったことがゴールの遠因となった。

唯一の本職左サイドバックであるアレックス・サンドロを早めに投入すればより楽にチャンスが作れたかもしれないが、彼は負傷明けで投入はリスクもあった。もしかすると、ロドリゴではなく、独力での打開力に優れたマルティネッリを入れたほうが、ヴィニシウスと同じメカニズムの下でスムーズに機能したかもしれない。

同点であれば有効打だったフレッジ投入。逃げ切りの局面では最悪の失策に。

ブラジルとしては交代選手の出来に物足りなさが残り、選手交代により攻勢をかけることができなかったのが苦戦の要因だろう。アントニーは投入早々の「ダイブ」で調子を崩したか、単調なプレーに終始し、ファウルアピールで目立つばかり。ロドリゴは先制点の遠因になったものの、輝きは限定的だった。ペドロは攻撃よりは守備面での貢献が目立った。

個人的にとりわけ失策だったと感じたのは延長後半からのフレッジの投入だ。彼は前線への飛び出しやインターセプトが持ち味である一方で、持ち場を離れて中央にスペースを生んでしまい、守備の穴になることも多い。逃げ切りを図りたい延長後半の展開においては言うなれば「最悪」の選手であった。

左サイドを軸に組み立てからフィニッシュまで絡めるという点では、先制するまでの膠着した展開には適任だったので、後半や延長前半での投入であれば効果的だっただろう。しかし、延長後半に必要なのは彼ではなく、中盤に安定をもたらすファビーニョだったはずだ。

案の定…ではあるが、結局は彼がクロアチアの同点弾をお膳立てする形となった。カウンターの局面で裏に飛び出したまではよいが、グヴァルディオルにボールを刈り取られ、ぽっかり空いた中盤のスペースを使われてクロアチアの速攻を食らった。もちろん彼一人の責任ではなく、足が攣ってしまい寄せきれなかったダニーロなどにも非はあるが、彼が持ち場をお留守にしたことが失点を招いたのは間違いない。



本記事は参考情報として提供しており、内容の正確性・最新性について保証するものではありません。

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