「笛が鳴るまでプレーを止めるな」は常識。「ボールアウトディレイ」も必要か?(CL第6節②)
チャンピオンズリーグのMatchday6。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。
Referee topics
副審のラインのイン/アウトの
ジャッジは非常に難しい。
シュツットガルト vs ヤングボーイズ
(Referee: Giorgi Kruashvili Assistants: Levan Varamishvili、Zaza Pipia VAR: Tiago Martins)
53分、シュツットガルトのリーダーがサイドを突破し、ゴールライン際に。ここでA2のザザ・ピピア副審(ジョージア)のフラッグが上がるも、そのままプレーが続き、結局シュツットガルトのシュートがゴールへ。ヤングボーイズ側は講義したものの、審判団はゴールを認め、VARも最終的には介入せず。シュツットガルトが勝ち越しとなった。
ピピア副審のフラッグアップはボールがゴールラインを越えた…という判断と捉えて間違いないだろう。フラッグアップをふまえてギオルギ・クルアシュビリ主審も笛を口元に持って行ったが、そこでフラッグが下がりクルアシュビリ主審も笛を吹かず。経緯を想像すると、「いったんは旗を上げたものの確信が持てず→いったんプレーを続けさせる判断を下した」としか考えられない。
なお、いちおう可能性としては、副審はラインアウトだと判断したが主審はインプレーだと判断して副審の判断を採用せず旗を下げさせた…ということも考えられるが、両者の位置関係をふまえると副審の判断を上書きできるほどの確信を主審が持てたとは思えず、この可能性はほぼないだろう。
オフサイドディレイが一般化した中で、オフサイドで旗を上げるべきタイミングであえて上げずにプレーを続けさせる…という運用は導入済みだが、ラインのアウト/インに関しては「VAR頼み」の運用は採られていないはずだ。副審は確信が持てないのであればフラッグを上げるべきではなく、またいったん上げたなら下げるべきではなかった…というのが審判評になる。
結果的に選手の混乱を生んだものの、旗が上がっただけではプレーは止まっておらず、主審の笛が鳴っていないので、そのままプレーを続けて決まったゴールは認められるべきだ。フラッグアップをもって特にヤングボーイズ側の選手がセルフジャッジでプレーをやめてしまったのは自己責任だ。「笛が鳴るまでプレーを止めるな」はサッカー界の常識である。
ゴール後のVARチェックではゴールラインを割ったかどうかもチェックされたはずで、最終ジャッジとしては「ゴールラインを割っていない」が正しいのだろう。現行の競技規則の運用としてはゴールを認めるべきだ。
今後に向けて…という視点で考えると、オフサイドにはディレイがあってボールのイン/アウトにはディレイがないのは若干チグハグにも感じる。もちろん、オフサイドに比べてイン/アウトの判断の回数が明らかに多いので、ディレイしていたらキリがない…というのも一理ある。
ただ、今回のようにゴール前でのシーンでは「ボールアウトだと思ったけどいったん続けさせる」のような運用があってもよいのでは…とは感じた。競技規則・VAR運用の改正は慎重に検討する必要があるが、現行運用の妥当性を改めて考える事例となった。
クラブ・ブルッヘ vs スポルティングCP
(Referee: Anthony Taylor VAR: Peter Bankes)
26分、クロスをアラウホがトラップしたところで、クラブ・ブルージュのアンドレアス・スコフ・オルセンが接触。アンソニー・テイラー主審(イングランド)はPK判定を下したが、VARチェックにより接触がエリアの外だったことが確認され、直接フリーキックに判定変更となった。
ファウルであることは異論の余地がないだろう。ボールに向けて伸ばした左足はボールに触ることができず、アラウホの前進をトリッピングで止める形になっている。位置の見極めはかなり際どく、私も初見ではエリア内(ライン上くらい)だと思ったが、映像で細かく見るとエリア外。ここの見極めは非常に難しく、テイラー主審を責めるのは酷だろう。
ブレスト vs PSV
(Referee: José María Sánchez Martínez VAR: Ricardo de Burgos Bengoetxea)
67分、PSVのシュートがブレストのアブドゥライエ・エンディアイエに当たったところで、ホセ・マリア・サンチェス・マルティネス主審(スペイン)はハンドを採ってPK判定。しかしVARが介入し、OFR(オン・フィールド・レビュー)が行われた結果、ノーハンドでPK取り消しとなった。
ボールはエンディアイエの右の太ももあたりに当たったあと、跳ね返って右腕に当たっている。ただ、エンディアイエは右腕を体に付けようとしており、ボールが当たった瞬間にはほぼ背中側に隠れるか…というくらいの位置であった。シュートブロックとして体の面積を広げようとはしておらず、いわゆる「バリア」が広がっているわけでもないので、ノーハンド判定が妥当だろう。
マルティネス主審としては、複数の選手が行き交う中で、覗き込むようにして視野を確保しながらの見極めになったため、腕の広がり方やボールが脚に当たったことを見極めきれなかったか。また、右腕が大きく動いた(これはエンディアイエの意図的なものではなく、ボールが当たった衝撃によるものだったが)ことが印象に残ったはずで、これがハンド判定を後押ししたと考えられる。
とはいえ、当時の状況で他のポジショニングの最適解は見当たらず、位置取りが間違いだったとは言い難い。主審にとっては非常に難しいシチュエーション・判定であった。
リール vs SKシュトゥルム・グラーツ
(Referee: Georgi Kabakov VAR: Carlos del Cerro Grande)
16分、リールのオサメ・サハラウィがエリア内で倒れると、ゲオルギ・カバコフ主審(ブルガリア)はニクラス・ガイルホファーのファウルを採ってPK判定。しかしVARが介入しOFRが行われた結果、PK取り消しとなった。
勢いをもってエリア内に侵入したオサメ・サハラウィだったが、転び方がかなりダイナミック(オーバー)であり、初見の時点で若干疑問が残る判定だったが、リプレイ映像で見ると接触の前に既に前傾で「跳んで」おり、結果的に接触はあるものの「ダイブ」と捉えるべきだろう。ノーファウル判定が妥当だ。ただ、結果的に接触はしているのでシミュレーションによる警告…とまではいかない。ノーファウルでPK取消…のみでよいだろう。
カバコフ主審としては、サハラウィが先にボールを触り、ガイルホファーがボールから遅れて接触…という印象が残り、サハラウィの足の動きや倒れ方の印象がぼやけた可能性がある。サハラウィの足の動きを注意深く見ておけば、両足のつま先を立てて「跳んだ」ことはわりと明らかで、転倒の全体像としてもダイブが疑われるパターンであるり、主審としてはしっかり見極めてプレーを続けさせたかった。
ベンフィカ vs ボローニャ
(Referee: Radu Petrescu Assistants: Radu Ghinguleac、Mircea Mihail Grigoriu VAR: Pol van Boekel)
2分、ベンフィカのパブリディスがゴールを決めるも、VARのOR(オンリー・レビュー)によりオフサイドでゴールは取り消しに。リプレイ映像で見ると、パブリディスはラストパスが出た時点で体一つ分は出ており、A2のミルチャ・ミハイル・グリゴリウ副審としてはこのレベルのオフサイドはしっかり見極めたいところ。グリゴリウ副審の立ち位置としても、ボローニャの最終ラインが止まったところで一緒に止まりきることができず、大きくずれた状態でのラインジャッジになっている。ラインキープという点で大きな改善の余地を露呈した形となった。
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