【マイケル・オリヴァー審判評】97分まで試合を続けた判断は妥当。難しいアディショナルタイム計算。
プレミアリーグ第15節の延期分として開催されたエヴァートンとリヴァプールによるマージーサイドダービー。グディソン・パークでの最後のダービーということで注目を集めた一戦は、後半アディショナルタイムの劇的な同点弾で引き分けとなった。
タルコフスキのゴールが決まったのは97分10秒あたり。アディショナルタイムのめやすの表示は5分だったので「長すぎるのではないか」という批判も散見される。
試合を通じてのファウルの基準(例えばオフサイドで取り消されたエヴァートンのゴールシーンで、そもそもファン・ダイクへのファウルがあったのでは?など)や試合後の乱闘(ドゥクレがリヴァプールファンを煽って、それに対してカーティス・ジョーンズが応戦など)も論点にはなっているが、今回は割愛する。
副審のオフサイドジャッジは素晴らしかったし、あれだけ揉み合いになったらドゥクレとジョーンズの両者にイエローカード提示は当然。そこまで論点はないので、本記事ではアディショナルタイムの妥当性のみ考えることとする。
前提:アディショナルタイムの考え方
まずは前提整理だ。今回のアディショナルタイムの表示は「+5分」だった。これを正確に捉えるためには、以下の2点をふまえる必要がある。
アディショナルタイムの表示では秒を切り捨てて表示する。つまり「5分」の場合は「5分0秒~5分59秒」を含む。
90分以降に空費された時間は、表示されたアディショナルタイムに加算される。(=90分を過ぎた後にプレーが止まった場合、90分+表示された時間では終わらないことがある)
また、アディショナルタイムの計測方法(何をもって「空費された時間」と考えるか)は絶対的な基準があるわけではなく、審判員によっても計測方法・考え方は差があることは念頭に置く必要がある。
今回は「長すぎる」という主にリヴァプール側からの主張の妥当性を検討することになるので、めやす表示の時点で「5分59秒」というアディショナルタイム想定だったとする。そうなると、90分以降に「1分11秒(71秒)」以上の空費された時間があれば、97分10秒までプレーを続けさせることの妥当性があったといえる。
最低でも2分は追加あり。オリヴァー主審のアディショナルタイム計算は十分に妥当だ。
それでは細かく見ていこう。
90分を過ぎてから最初にプレーが止まったのは90分57秒あたり。ミコレンコのクロスが大きくなりゴールキックとなった場面だ。そこからアリソンがゴールキックを蹴ったのが91分35秒。厳密かつ最大限に計算すると、ここで40秒弱のアディショナルタイム追加となる。
続いてショボスライがファウルを受け、91分53秒あたりで2度目の停止。これで得たフリーキックを蹴るまでに約30秒。つづいて92分45秒あたりでエヴァートンのシュートが外れてから、倒れていたダルウィン・ヌニェスが起き上がるのを待ち、アリソンがゴールキックを蹴ったのが93分22秒あたり。ここでも40秒弱の停止。
さらに、93分42秒、エヴァートンの選手同士の衝突でプレーが停止。このあとの再開が95分40秒付近なので、ここだけでさらに120秒の追加になる。
ここまでで40秒+30秒+40秒+120秒なので、4分弱が「90分を過ぎた後に空費された」と捉えることができる。もちろんここまで厳密かつ最大限にアディショナルタイムを加算するのは現実的ではないし、今回のオリヴァー主審もやっていないはずだが、少なめに見積もってもゴールキックで各15秒×2、エヴァートンの頭部接触で90秒は追加すべきであり、合計2分の追加は最低ラインだろう。
つまり、この時点でさきほど設定した「1分11秒(71秒)」は明らかに上回る。したがって、97分までプレーを続けさせた判断は十分に妥当なものであり、アディショナルタイムという観点でオリヴァー主審が批判を受けるのは理不尽である。
本質は「90分プレーする」こと。
ちなみに、97分12秒付近でゴールが決まってから、VARチェックを経てゴールが確定したのが100分20秒付近。ここでVARチェックに3分かかっているわけだが、これで「さらにアディショナルタイム3分追加」と捉えるのは間違いだ。
順番に整理して考えると、以下のようになる。
もともとのAT表示は5分(ここでは計算を簡単にするため、5分00秒の意味合いだとする)だったので、90分を過ぎてからまったく試合が止まらなければ、試合は95分00秒で終了になる。
90分を過ぎてから3分をATとして追加した場合、試合は98分00秒で終了予定となる。
ここで97分にゴールが入ってVARチェックに3分かかったとする。チェックがなければ残り1分(98分)で試合は終わったはずなので、VARチェックに何分かかったかに関係なく、再開後にプレーをさせるべき時間は1分になる。
文章で書くとややこしいが、要するに本来の目的は「90分間プレーする」ことである。イメージとしては、プレーが止まるたびに時計を止めて、90分に達したところで試合終了…という感じだ。
とはいえ、審判員でも混乱することは少なくない。特に90分を超えてから負傷や乱闘などでプレーが長く止まった場合、「アディショナルタイムのアディショナルタイム」を採ってしまうことも過去に事例として発生している。いやはや難しい。
本記事は参考情報として提供しており、内容の正確性・最新性について保証するものではありません。
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