エメルソンは質が足りず、ダイアーは特長を活かせず。疑問が残るコンテ采配。(プレミア第16節)
プレミアリーグ第16節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。
Referee topics
ファウルを受けた選手が「粘る」と
審判としての判断は難しくなる。
マンチェスター・C vs ブレントフォード
(Referee: ピーター・バンクス VAR: デーヴィッド・クーテ)
26分、ベルナルド・シルヴァの仕掛けに対してヘンリーがたまらずハンド。ハンドであることは明白で論点は位置(ペナルティエリアの中か外か)だったが、バンクス主審は外であると判断し、時間を要したVARチェックの末にその判定がフォローされた。
リプレイ映像で見ても極めて微妙であり、VAR担当のクーテ氏としては「明確にペナルティエリアの中である」と判断できずにバンクス主審の判定をフォローしたのではないか。仮にバンクス主審がPKであるとジャッジしていた場合にも、その判定はフォローされたかかもしれない。なお、バンクス主審が事象を見ていた位置はかなり中央寄りであり、エリアの内or外を正確に見極められるポジションではなかったようには感じた。
オフサイドについては、映像上にライン(2D/3D)を引いて確認できるうえに、半自動オフサイドテクノロジー(semi-automated offside technology)の導入で、より厳密なライン判定ができるようになってきた。ゴールを割ったかどうかも同様だ。一方で、タッチラインを割ったかどうか、ペナルティエリアの中か外かという点は現時点ではテクノロジーのできる範囲は少ない。
テクノロジーに依存するのがよいとは思わないが、高速化する現代サッカーの中で「人と技術が共存するレフェリング」は必要であると思う。現行の技術を前提とするなら、そこでカバーしにくい点は「審判の頑張りどころ」なのかもしれないし、今回の事例だとバンクス主審はエリアの中or外が判定できる位置までスプリントをかけるべきだったという見方もできる。
ノッティンガム・フォレスト vs クリスタル・パレス
(Referee: ジョン・ブルックス VAR: ダレン・イングランド)
29分、ゴール前に抜け出しかけたリンガードをミッチェルが倒してファウル。DOGSO(決定機阻止)に当たるかどうかは、カバーに来ていたアンデルセンをどう捉えるかが論点だろう。ファウルが起こった時点で映像を止めてみると、アンデルセンのカバーは間に合っておらず、リンガードはGKと1対1でシュートを打てたようには思える。
よって個人的にはDOGSOで一発退場とするのが妥当だったと考えるが、DOGSOの要件(守備者の位置と数)を満たさないと判断したブルックス主審の判定は「明白な間違い」とまでは言えず、VARが介入しなかったのは理解できる。
なお、今回のようなケースでは選手が倒れた時点でシャッターを切ってしまいがちだが、本来は「ファウルが起こった時点」で判断せねばならない。ファウル(今回の場合はプッシング)が起こってから選手が倒れるまでは時間差があるため、守備側の競技者は間に合っているようには見えがちだが、実際は一見した印象よりは遅れていることも多い。審判にとっては非常に難しい判断を求められる事象であることは、審判以外のみなさんにもご理解いただきたいところだ。
一方で39分のPKは「Easy Decision」だろう。ザハのクイックネスに対応が遅れたウォレルが明らかにホールディングをしており、ファウルではあることは明白だ。ブルックス主審としても適切なポジションをとれていたので、自信をもって判定を下せたことだろう。
54分はオフサイドの旗が上がったのち、VARのOR(オンリー・レビュー)によりオフサイドが取り消しとなったが、A2のホーソン副審を責めることはできないだろう。見る映像の角度にもよるが、一見すると明らかにオフサイドに見えるシーン。人間の目で見極めることができる限界点を超えていると感じる。
ウェストハム vs レスター
(Referee: ジャレット・ジレット VAR: クリス・カヴァナー)
38分、裏に抜け出したダカに対して追いすがるドーソンがスライディングタックル。ジレット主審はボールに対するプレーであると判断しノーファウルとしたが、VARが介入。ジレット主審がOFR(オン・フィールド・レビュー)を行い、PKとジャッジした。
リプレイ映像で見ると、ドーソンは最終的にボールに触れてはいるものの、その前にダカの左足に接触している。ただ、この際にダカが左足をあえて「晒した」ような印象もあるため、判断は非常に悩ましいところだ。個人的には、ダカの左足の動きはドーソンをブロックするための自然な動きの範疇としてみなせると思うので、ファウルでPKが妥当であると考える。
なお、状況としてはやや角度が厳しいもののフリーでシュートを打てる状況であり、DOGSOになる。今回はボールに対するプレーなので懲戒罰は一段階下がってイエローカードとなる。OFRを経たジレット主審の判定は妥当だ。
ジレット主審としては、縦に速い展開に対して出遅れてしまい、かなり遠い位置での見極めを余儀なくされた。ボールに触れたかどうかは体に隠れてしまいはっきり見えなかったはず。A2のメレディス副審からは見えた可能性があるが、主審のポジショニングとしては改善の余地が大きい。
ブライトン vs アストンヴィラ
(Referee: クリス・カヴァナー VAR: ジャレット・ジレット)
19分、エリア内に走りこんだマッギンをダンクが倒してPK。マッギンが「もらいに行った」印象は強いものの、マッギンが先にボールに触れておりダンクが遅れたのは確か。カヴァナー主審の判定は妥当だろう。状況としてはSPA(チャンス阻止)であり、ボールに対するプレーなので懲戒罰はナシ。
トッテナム vs リーズ
(Referee: マイケル・サリスバリー VAR: ポール・ティアニー)
76分、リーズがボール奪取からロドリゴが決めて勝ち越し。このシーンではベンタンクールに対するアダムズのチャージがファウルかどうか…が論点になりうるが、やや遅れ気味ではあるものの微妙なところで、主審の判定が尊重される事象だろう。サリスバリー主審が「若干の接触はあったがファウルには値しない」と判断すれば、VARの出る幕はない。(もし接触自体を見逃していれば話は別だが)
各試合の講評
負傷者続出にW杯参戦。
ポッター監督の悩みは尽きない。
トッテナム vs リーズ
リヴァプールに力負けを喫したスパーズは、クルセフスキとリシャーリソンが先発となり、3-4-3の布陣で挑んだが前半はあまり機能せず。後半の中盤以降の怒涛の反撃(リーズ側の強度がガクッと落ちたのもあるが)で勝ち点3をもぎ取ったが、試合内容自体は褒められたものではなかった。
首を傾げるしかないのは、右サイドの選手起用だ。攻守ともにプレーの質が足りないエメルソンがなぜ起用され続けるのか。守備では戻りが遅いうえにマークを外す場面が多く、攻撃面ではパスもシュートもクオリティ不足。攻撃面での躍動感と言う点ではドハーティの方が上で、守備に不安があるとはいえ攻撃面全般のクオリティをもったスペンスは将来性という点でも起用のメリットは大きい。
右サイドという点では、リヴァプール戦に続いてダイアーを右センターバックで起用したのも疑問が残る。3バックの両サイドセンターバックに必要なのは機動力とパワーであり、スピードに難がありパス出しとカバーリングに特長があるダイアーには不適だ。今節でも開始早々の失点に絡んでおり、2試合連続で戦術の被害者となった。ロメロが離脱中で、ダビンソン・サンチェスも精彩を欠いているとはいえ、ダイアーは3バックの中央でこそ活きるはずだ。
ニューカッスル vs チェルシー
10月はトランス状態に入った感もあったアルミロン。エディ・ハウ監督とともに月間最優秀選手・監督に選ばれ、チームも上位が狙える位置まで浮上。今節でもプレー強度・インテンシティの高さでチェルシーを上回り、勝利を収めた。欧州カップ戦に出場する昨季の上位クラブが過密日程でパフォーマンスを落とす中、ニューカッスルはカップ戦がないことも奏功している印象だ。
一方のチェルシーはポッター監督就任によりやや持ち直したが、各ポジションに代わる代わる負傷離脱者が出ていることもあり、試合内容は安定感を欠いている。今節は新鋭のルイス・ホール、前線にブロヤを先発起用し新陳代謝を図ったようにも感じられたが、両者の輝きは限定的。中盤より後ろは負傷者続出、前線は人員過剰という別の要因でメンバーが定まらず、連動性はなかなか上がっていない。中断期間で連携成熟に努めたいところだが、主力の大半はワールドカップに出場する。ポッター監督の悩ましい日々は続く。
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