グループE展望:日本の命運は初戦にあり。プレスのメリハリと交代策が鍵。(カタールW杯)
カタールW杯グループEの行方を展望する。記事後半では日本代表が勝ち抜けるために必要なことについても言及する。
カタールW杯グループE
「2強2弱」が濃厚。
日本は初戦にすべてを懸けよ。
スペイン
(12大会連続15回目)
コスタリカ
(3大会連続6回目)
ドイツ
(18大会連続20回目)
日本
(7大会連続7回目)
「2強2弱」を覆すとすれば、選手個々のレベルが上がった日本だろう。
一般的な見方としてはこのグループも「2強2弱」と捉えられているだろう。W杯優勝経験があるスペインとドイツが勝ち抜け、日本とコスタリカが敗退。これが最も可能性の高いシナリオだ。
前回W杯で「惨敗」を喫したドイツはフリック監督のもとでアイデンティティを取り戻した。大本命ではないが、優勝の可能性を挙げる有識者もいる。一方のスペインは長期政権を築くルイス・エンリケ監督のもとで理想と現実の妥協点を見つけた。伝統のポゼッションを軸にしつつも速攻も取り入れた複合戦術は機能性が高い。
日本とコスタリカにチャンスがあるとすれば、初戦で勝ち点1以上をもぎ取ったうえで、第2節の直接対決で勝利…というパターンしかない。日本はプレッシング、コスタリカはリトリートという異なる守備アプローチが格上の2か国にどのくらい機能するかが鍵になる。
贔屓目を抜きにしても、前回大会から戦力の上積みが少ないコスタリカよりは、欧州で活躍する選手が大半を占めるようになった日本のほうがグループステージ突破の可能性は高い。もちろん「コスタリカと比べれば高い」というだけで、絶対的な可能性としては低いのだが。
フリック監督のもとでハイブリッドなスタイルに進化したドイツ。
EURO2020後に就任したフリック監督のもと、ドイツはレーヴ監督時代のマンネリ感を脱したようには思える。ポゼッションを捨てたわけではないが、ときとしてロングボールも厭わず、状況に応じて振る舞い方を変えられるチームに進化した。
中心メンバーがそこまで変わったわけではない。最大の変化は右サイドバック起用が多かったキミッヒが中盤センターに固定されるようになったこと。チームで唯一の6番タイプ(司令塔)として、組み立ての全権を担っていると言っても過言ではない。多士済々なドイツの中でも唯一代えが利かない存在だ。
前線はスピードタイプが多いが、本格派のフィルクルクをサプライズ招集したように、いざというときには「力技」もできる陣容となった。むしろ悩ましいのは選手の組み合わせで、ゲッツェやムココはスーパーサブとして、トップ下タイプのミュラーやムシアラ、ウィングタイプのザネやニャブリなど豊富な2列目のアタッカーをどのように組み合わせるかが鍵だろう。
6番タイプはキミッヒのみで代役不在。2列目は多士済々だが、注目は新鋭ムシアラ。
不安があるとすればキミッヒへの依存度の高さ。ゴレツカやギュンドアンはボックス・トゥ・ボックスのタイプであり、中盤センターで司令塔になりえるのはキミッヒのみ。彼が万が一負傷などを抱えた場合のオプションは事実上ない。また、左サイドバックのラウムは攻撃参加が魅力である一方で裏のスペースを空けがちで、フェラン・トーレスや伊東純也などスピードに優れた対戦国の右アタッカーにとっては狙い目になるか。
なお、今大会でブレイクスター候補筆頭となっているムシアラは、バイエルンでの絶好調を代表に持ち込めるか…が注目だ。個人的にはサイドではなくトップ下に入りながら流動的に動くほうが持ち味を活かしやすいと思うが、トップ下起用が最適なのはミュラーも同じ。さらに左ウィングのザネはサイドに張るタイプであり、ムシアラの流動性に蓋をする可能性もある。個人的にはミュラーが途中投入されて前線の迫力が増すのが最も対戦相手を苦しめるようには思えるが、フリック監督の判断はいかに。
ショートパス主体のスペイン。ショートカウンターも選択肢の一つに加えてグレードアップ。
スペインといえばパスサッカー…というイメージはいまだに強いが、ルイス・エンリケ監督率いる現代表はそれだけではない。「ボールは持てるが前に進まない」という呪縛に悩まされた時代を超え、直線的にゴールに迫ることができるフェランやモラタを起用しているのは最たる例だ。ボールを奪われたらカウンタープレスに転じ、ボールを奪い返してカウンターに転じる場面も散見される。
もちろんポゼッションは現在もアイデンティティであり続けており、ロングボールはほとんど使わない。特徴的なのはビルドアップ時にサイドバックが低めの位置をとる点だ。センターバックが左右に広がってサイドバックを前に押し出すのが現在の主流だが、スペインの場合にはサイドバックを低い位置に残してパス交換に参加させている。相手がプレッシングを仕掛けてきた際には、テクニックに優れたサイドバックが逃げ道となっている。
スペインの泣き所は最終ライン。被カウンターの強度はアキレス腱になりかねない。
スペインにとって懸念材料となるのは最終ラインだ。現時点でのファーストチョイスはラポルトとパウ・トーレスだろうが、両者ともに左利き。この二人の場合にはラポルトが右を務めるが、相手が内を切るプレッシングをかけてきた場合には窮屈感が否めない。
また、ラポルトとパウはスピード、3番手のエリック・ガルシアはフィジカル強度に難を抱えており、ハイラインの裏を突くパスに対しては非常に脆い。グループステージでの対戦国はいずれも前線にスピードがある選手がいて、中盤より後ろには高精度のロングフィードが出せる選手もいるだけに、ここが致命傷になる可能性も否めない。
コスタリカは戦術的な上積みはほぼなし。カウンターで一泡吹かせられるか。
3大会連続出場となるコスタリカのアイデンティティは変わらない。5バックでの粘り強い守備とスピードに長けたアタッカーを活かしたカウンターだ。主力の大半が14年大会・18年大会を経験しているため、経験値がプラスに働く一方で、主将のルイスやストライカーのキャンベルなどは加齢による衰えが隠せていない。
前回大会に比べるとより攻撃的な志向を高めている印象だが、戦術的な上積みは少なく、厳しい戦いが予想される。サンダーランドで活躍する18歳のベネットは国内外の注目を集めているが、裏を返せば期待がかかるのは彼くらいだ。
コスタリカにとって幸運なのは、対戦国が3か国とも被カウンターの局面で脆さを抱えている点だ。試金石となるのは初戦のスペイン戦。圧倒的にボールを保持される展開になるのは間違いないが、その中で鋭いカウンターを打てるか。そしてナバスを中心とする守備陣が踏ん張れるかが注目だ。
選手個々の調子に大きく左右される森保ジャパン。しかし、主力に負傷が相次ぎ暗雲が。
前回大会を超えるベスト8をめざす日本にとって厳しいグループに入ったことは間違いない。前回大会に比べても欧州で活躍する選手は増えており、選手個々のレベルが上がっているのは間違いないが、森保監督のチームは戦術的に整備されているとはいえず、選手個々の調子にチームパフォーマンスは大きく左右される。
そうなると選手個々のコンディション・調子が生命線になるが、状況は芳しくない。中盤の要である遠藤航と守田英正が揃って負傷を抱えており、センターバックも冨安が負傷中で板倉も長期離脱明け。森保監督の信頼が厚い浅野と田中碧も離脱明けで試合勘が失われており、モナコで輝けていない南野のプレークオリティはここ半年で下がる一方だ。おまけに崩しの切り札である三笘も体調不良で合流が遅れ、万全とは言いがたい。
日本は初戦のドイツ戦にすべてを懸けるべし。プレスのメリハリと交代策が鍵を握る。
9月のドイツ遠征ではハイプレスを軸とした戦いに一定の手ごたえを得たが、代えが利かない主力の負傷で暗雲が立ち込めている。光明を見出すとすれば、対戦国にとってウィークポイントとなりうる左サイド(日本の右サイド)にスピードスターの伊東純也を擁している点、トップ下の鎌田が調子を上げている点くらいか。
日本国内では第2節のコスタリカ戦での勝ち点3を想定する声も多く聞かれるが、日本は5バック気味で守りを固める相手はアジア予選で攻めあぐねたことも多く、簡単な試合ではない。そうなると、スロースターターの傾向もあるドイツと対戦する初戦に懸けるほかない。
ドイツ戦での注意点としては、腰の引けたサッカーをしないことだ。理想的な展開としては、ハイプレスでビルドアップのミスを誘って先制…というパターンだが、重要なのはその後の振る舞い。仮にリードを奪ったとして、そこから自陣に引きこもって守り切れるほどの守備強度はない。体格で勝るドイツの攻撃を真正面で受け止めるのはリスクでしかないので、先制したとしても変わらず敵陣からのプレッシングを続けるべきだ。
もちろん、90分間ハイプレスをかけるのは不可能だが、5枚の選手交代枠を最大限に活用しつつ、後半の中盤以降にも一定の強度を維持したい。その場合、序盤はボールを奪いに行く強度の高いプレス、中盤はコースを限定して相手の自由を制限するプレスなど、プレッシング強度のメリハリも必要だ。連動性と継続性を高いレベルで維持できるか…が日本の命運を握っている。
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