入念な準備で築いた一糸乱れぬ守備ライン。サウジが「青い」アルゼンチンを撃破。(カタールW杯)
カタールW杯グループステージ第1節。サウジアラビアがアルゼンチン相手に大金星を挙げた一戦を、簡単に講評する。
アルゼンチン vs サウジアラビア
<Referee topics>
細やかなマネジメントを見せたが、
肝心な事象を見逃した。
アルゼンチン vs サウジアラビア
(Referee: Slavko Vinčić VAR: Pol van Boekel)
スロヴェニア出身のヴィンチッチ主審は42歳。ここ数年の欧州カップ戦ではビッグマッチを任されることも多く、昨季はヨーロッパリーグ決勝も担当した。スロヴェニアの審判員といえば、前回W杯で日本vsコロンビアの主審を務めたダミル・スコミナ氏が有名だが、彼が引退した現在ではヴィンチッチ主審がトップランナーと言えるだろう。
4分、遅れ気味にタックルに入ったサウジアラビアDFに注意を与える。アルゼンチン側にボールは繋がっていたのでアドバンテージを適用してもよい場面ではあったが、試合序盤でのやや危険なプレーということもあり、試合を止めてしっかりと注意を与えた。このあたりはビッグマッチでの経験が活かされたマネジメントといえよう。
6分のコーナーキックのシーンでは特にファウルは採らなかったが、VARが介入。OFR(オン・フィールド・レビュー)の結果、PKとジャッジした。アブドゥルハミドがパレデスを抱え込んでいるのは映像で見ると明らか。ヴィンチッチ主審としては試合最初のセットプレーということでファウルを抑止する声掛けはしていたものの、ニアに走りこんだ選手たちに気を取られてフォーカスしきれなかったか。
後半はリードしたサウジアラビアのファウルや遅延行為気味の倒れこみが続発したものの、カードをうまく使いつつ、倒れこみの際には「時間を止めている」旨をジェスチャーで周囲にアピールするなど、主にアルゼンチン側のフラストレーションを抑えようと努めていた。マネジメント面は抜群だっただけに、肝心の事象の見極めでの失敗が悔やまれる。
なお、主審以上に大忙しだったのが副審だ。特に前半はサウジアラビアが敷いたハイラインの裏をアルゼンチンが狙う…という構図が続き、ぎりぎりのラインジャッジが相次いだ。ラウタロのゴール取り消しは非常に際どく「ミス」とは言えない。むしろ見誤ったのはその1度だけであり、A1のクランクニク副審の見極めはむしろ称賛に値するだろう。
試合の講評
内弁慶を遂に克服。
綿密な準備でアルゼンチンを撃破。
アレハンドロ・ゴメスは守備面で穴になった感あり。
戦力充実で優勝候補にも挙がるアルゼンチン。スタメンには予想通りのメンツが並んだが、負傷でメンバー外となったロ・チェルソに代わる左サイドに攻撃的なアレハンドロ・ゴメスを選んだのはやや予想外であった。メッシやディ・マリア、デ・パウルが幅広く動く中で「バランサー」的に振る舞っていたロ・チェルソに対し、アレハンドロ・ゴメスは生粋のアタッカー。押し込む展開を想定したのかもしれないが、非常に攻撃的で思い切った采配には思えた。
その采配が成功したか…という点でいうと、やや微妙か。攻撃では高いテクニックを随所で見せたものの、守備面では彼がいる左サイドから突破を許す場面も多かった。もちろんパレデスのスライドがやや遅れたり、後方のタグリアフィコとの距離感が悪かったりなどの問題はあった。とはいえ、相手右サイドバックの前進に対しての戻りが遅れる場面は散見され、守備面ではやや「穴」になった感もある。
サウジアラビアの一糸乱れぬ守備ラインは、入念な準備の賜物だ。
サウジアラビアとしては、恐れずにハイラインを敷いて陣形をコンパクトにしていたのが際立っていた。アルゼンチンは当然裏のスペースを狙っていたが、ライン設定に乱れがないので大半の場面でオフサイドに。一糸乱れる守備ラインはアルゼンチンの強力攻撃陣を封殺した。
サッカー雑誌やサッカー専門サイトのサウジアラビアの紹介欄には必ず書いてあるが、サウジアラビアはリーグ戦を早々に中断し、大会に向けて代表チームでトレーニングを続けてきた。この準備期間があったからこそ、守備陣が極めて高い連動性を発揮できたのは間違いない。国を挙げて万全の準備を進めたことが、アジアでの堂々たる戦いを本大会で見せられない「内弁慶」の克服につながったといえよう。
縦一辺倒の攻撃と効果の薄いクロス。連勝街道を歩いてきたアルゼンチンには、ビハインド時のシナリオがなかったか。
アルゼンチンとしては、後半立ち上がりの失点でスタジアムも含めて相手を勢いづかせてしまったのが痛恨だった。メッシがボールをキープできずにロストすると、ラインを飛び出して前に出たロメロがポジションを修正しきれずに生まれたギャップを突かれた。2失点目に関してはアル・ドサリの仕掛けとシュート技術を褒めるべきであり、その意味では1失点目が悔やまれる。
また、ビハインドを追った状態での試合運びという点では、ABEMA解説の槙野智章氏が指摘していたように縦に急ぎすぎて一辺倒になってしまった印象は否めない。中央に上背がないにもかかわらずクロスを放り込むなど、焦りゆえのチグハグ感は強く、サウジアラビアの守備対応はシンプルになり、むしろやりやすくなった感もあった。このあたりはW杯初出場の選手が多いという点で、「青い」部分が見えたともいえよう。
今大会まで無敗街道を突き進んできたアルゼンチン。スカローニ監督としてもビハインドの展開は想定外だったはずで、選手も明らかにバタついていた。初戦の黒星は手痛いが、これで逆にチームが引き締まる可能性もある。若くポテンシャルがある選手は多いだけに、スカローニ監督の手腕、主将のメッシのキャプテンシー、重鎮オタメンディのリーダーシップが求められる。
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