より早い選手交代と選手層の拡充。吉田孝行監督の真価が問われるヴィッセル神戸。(J1第15節)
J1リーグ第15節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。
Referee Topics
舘の一発退場は厳しい。
とはいえ主観的な判断なので、
VARの介入は難しい。
広島 vs 湘南
(主審:松尾一 VAR:清水勇人)
13分、ベン・カリファに対するスライディングタックルで舘が一発退場に。ボールを奪われた場面での無謀なプレーであり、かなりの勢いがついた状態で足首あたりに接触しており、捻挫や靭帯損傷などのリスクは孕んだ危険なタックルではあった。
とはいえ、足裏がヒットしたわけでもアキレス腱などに接触したわけでもないので、レッドカードはやや厳しかったのではないかという印象だ。松尾主審としては、接触の強度を重視してレッドカードという判断に至ったと思われるが、前半の早い段階で数的不利となる打撃も考えると、イエローカードで収める判断のほうがよかったようには思う。
とはいえ、松尾主審が接触の強度を「無謀」ではなく「過剰」と判断したのであれば、事実誤認(例えば足裏が接触したように見えていた等)がない限りはVARは介入するのは難しい。逆に、もし松尾主審がイエローカードを提示していても介入はなかったであろう。VARがOFR(オン・フィールド・レビュー)をレコメンドしなかったのは妥当だ。
77分には、松本のシュートが杉岡の腕に当たってPK。接触箇所が腕かどうかは際どいが、ボールが上腕部に触れていることは間違いない(物理的にあの状態で脇の下のみにボールが当たることはほぼありえない)。至近距離ではあったがシュートが飛んでくることは明白なシーンであり、腕に当たった場合には「バリア」とみなされ、ハンドを採られるのはやむを得ないだろう。
神戸 vs FC東京
(主審:笠原寛貴 副審1:淺田武士 VAR:岡部拓人)
57分、エリア内の競り合いで山川の手にボールが当たりハンドでPKに。ヘディングの競り合いで相手が触った後に山川の腕に当たっているのは確かだが、そこまで多く腕は広がっておらず、ヘディングで競り合う際の腕の動きとしては「自然」なものに見える。個人的にはノーハンドにすべきだったと考える。
笠原主審としては、角度的に山川の腕が大きく広がっているように見え、その印象が強く残ったのかもしれない。腕の位置が妥当かどうかは主観的な判断なのでVARが「明白な間違い」として介入するのは難しいと思うが、あのシーンでハンドを採る審判員はほとんどいないだろう。映像での確認を促してもよかったようには思われる。
84分の弛木のハンドはほとんど議論の余地はない。クロスをブロックする際に腕があの位置まで高く上がっていればハンドはやむを得ない。笠原主審の角度からは見えにくかったかもしれないが、A1の淺田副審の位置からは明瞭に見えたはずだ。
鳥栖 vs 鹿島
(主審:山本雄大 VAR:吉田哲郎)
71分、エリア内でアルトゥール・カイキが山崎と接触して倒れるもノーファウル。山崎はボールに触れることができていないが、接触の程度はそこまで強くない。またリプレイ映像で見ると、接触の瞬間にカイキが右足を揃えて飛んでいる(右足の甲をピッチに沿わせている)ように見える。
山崎の対応が後手を踏んだのは確かだが、カイキがプレーを続けられる余地があったのにあえて倒れたという印象は強く、個人的にはノーファウルで妥当だと考える。VARとしては、例えば山本主審が「山崎はボールに触れている」という認識だったなら明白な間違いとして介入しただろうが、「接触はあったが倒れるほどではない」という判断であればフォローだろう。
C大阪 vs 横浜FC
(主審:飯田淳平 VAR:先立圭吾)
85分、セレッソの2点目のシーンでは、香川がエリア内で倒れるも笛は鳴らず、その直後にゴールが決まった。香川が倒れて動きが止まったところでカピシャーバが抜け出しており、アドバンテージ適用であれば見事なレフェリングだったが、飯田主審はアドバンテージシグナルを示しておらず、ノーファウルという判断だったのかもしれない。
個人的には香川に対する吉野のチャージはファウルだと思ったので、「アドバンテージを適用したうえでゴールを認める」というのが最も理想的なレフェリングだったように思う。なお、もしカピシャーバのパスがつながらなかった場合はロールバックしてPKを採るのもありえただろう。(パスが通って中原がシュートを外した場合には、決定的なシュートまでいった時点で既に大きな利益を得ていると思うので、ロールバックはしないのが妥当な落としどころだろう)
新潟 vs G大阪
(主審:上田益也 VAR:福島孝一郎)
各試合の講評
運動量ベースの広島と神戸。
夏場に向けて選手層の拡充が必須。
新潟 vs G大阪
広島 vs 湘南
連敗同士の対戦は前半の早い段階で舘が一発退場。その後はサンフレッチェが主導権を掌握し、ソム・ボムグンを中心にベルマーレが辛抱強く守る展開が続いたものの、PKで1点をもぎ取ったサンフレッチェが連敗を2で止めた。
サンフレッチェは主力に負傷が相次いだこともあり、出番が少なかった茶島、柏、松本あたりを起用。ソム・ボムグンの好セーブもあって1点のみにはなったが、主力の多くを欠く状態で勝点3を獲得できたことは次につながるだろう。
サンフレッチェのアグレッシブなサッカーは豊富な運動量とプレー強度が生命線であり、夏場に向けて選手層の拡充・底上げは必至。キープレーヤーの満田の負傷離脱とともに下降線を描いていたが、控え組にとっては価値を示す絶好の機会だ。
神戸 vs FC東京
前半のうちに3点リードを奪ったヴィッセルだが、後半は押し込まれて2本のPKを献上。辛くも逃げ切ったものの、試合の進め方という点では課題が浮き彫りとなった印象だ。
開幕当初は入れ替わりがあったものの、ここ最近は4-3-3で各ポジションのメンバーが固まりつつある。メンバーの固定化により連携面での成熟が進む一方で、連戦による蓄積疲労は否めず。強度が高いサッカーを志向していることもあり、後半にガクッとチームとしてのインテンシティが落ちる試合が目立っている。
鍵となるのは選手交代だが、今節も最初の交代が70分過ぎのセンターバックの入れ替えであり、運動量が求められる中盤から前の交代は80分近くになってからであった。ジョアン・パトリッキや井出などある程度計算が立つメンバーがベンチにいることをふまえると、選手交代のタイミングはやや遅いように感じる。
イニエスタの出番が減ったのが象徴的だが、現在のヴィッセルの個々の運動量がベースになっている。サンフレッチェにも通じるが、この戦術を暑さの影響が出る夏場に継続できるかどうか…は選手層の拡充に懸かっている。シンプルな戦術でタレント集団を活かす吉田孝行監督だが、「二の矢」「プランB」を示せるかどうかの真価が問われている。
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