交代要員はエリアを出た時点で警告対象。三田の一発退場判定は異議の内容が原因?(J1第18節)
J1リーグ第18節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。
Referee Topics
アル=マッリ主審デビュー。
他試合では難しいジャッジ続出。
湘南 vs 鳥栖
(主審:
ハミス・アル=マッリ
VAR:木村博之)
5月~6月にかけて圧巻のレフェリングを見せつけて帰国していったアンディ・マドレーに続いて、カタールからの招聘審判員であるハミス・・アル=マッリ(Khamis Al-Marri)がJリーグで初の主審を担当。各ジャッジはのちほど別記事で詳しくレビューしたい。
48分のPK判定については、長沼側がやや「跳んだ」感はあったものの、杉岡のチャレンジはボールにまったく届いておらず、長沼の足に接触しているので、不用意なタックルとして十分にファウルに値する。PKを与える判定は妥当だろう。
京都 vs 横浜FC
(主審:池内明彦 副審1:和角敏之 VAR:上村篤史)
前半アディショナルタイム、横浜FCのベンチメンバーであった三田がスローインの判定に対して抗議し、退場処分となった。
まず、交代要員はベンチ(テクニカルエリア含む)とウォーミングアップエリアを離れることは認められていないので、そもそもエリアを出た時点で警告の対象となる。たとえ審判に抗議をしていなかったとしても、この時点でイエローカードは確実だ。(得点時などに明らかにエリアを出ている場面はあるが、これはプレーに関与したり抗議の意図があったりするわけではないので、現実的には許容される場合が多い)
それでは退場に値したか…という点はやや微妙にも思える。リプレイ映像を見ると、和角副審の肩に手をかけようとしていたり、和角副審に肘のあたりが接触していたりしているようには見えるが、即退場となるほどの接触には思えない。ただし、なんらか異議を唱えながら詰め寄ったり副審に接触したりしたとすれば、競技規則における「攻撃的な、侮辱的な、もしくは下品な発言をする、または行動をとる。」に該当し、退場処分となる可能性がある。
個人的にはそこまで攻撃性は感じないので、警告+厳重注意で収めてもよかったようには思う。しかし、我々は三田が発した言葉を把握できていないし、当事者である和角副審が接触の有無や抗議の度合いを最もよく把握しているのは間違いなく、退場判定を否定することはできない。VARとしても、リプレイ映像では「接触がなかった」と断定するのはほぼ不可能であり、あとは程度をどう捉えるか…という解釈の問題なので、介入は難しいだろう。
なお、「チーム役員」の場合には競技規則において以下の規定があるため、「副審に詰め寄る」行為をとった時点でとほぼ確実に退場になるであろう。
退場となる反則は、次のとおりである(ただし、これらに限らない)。
(※中略※)
・意図的にテクニカルエリアを出て、次のことを行う。
・審判員に対して異議を示す、または抗議する。
・挑発するような、または相手の感情を刺激するような行動をとる。
・攻撃的または対立的な態度で相手チームのテクニカルエリアに入る。
・競技のフィールドに物を意図的に投げ入れる、またはけり込む。
・競技のフィールドに入り、次のことを行う。
・審判員と対立する(ハーフタイムと試合終了後を含む)。
・プレー、相手競技者または審判員を妨害する。
・ビデオオペレーションルーム(VOR)に入る。
・相手競技者、交代要員、チーム役員、審判員、観客またはその他の人(ボールパーソン、警備員、競技会役員など)に対する身体的または攻撃的な行動をとる(つばを吐く、かみつくなど)。
(※以下略※)
『サッカー競技規則2022/23』 第12条 ファウルと不正行為 3. 懲戒処置 チーム役員
ちなみに、三田の抗議の発端となったスローインの判定については、ラストタッチは京都側の山崎であり、横浜FCボールとするのが妥当であった。エリアを飛び出して副審に詰め寄る行為はいただけないが、抗議したくなる気持ちは大いに理解できる。
浦和 vs 川崎F
(主審:今村義朗 VAR:西村雄一)
78分、小塚が一発退場。ショルツに対するスライディングで足裏がショルツの足首あたりにがっつり入っており、文字通りの「過剰な」力がかかったプレーであった。足を曲げて衝突を和らげる意図もなく、勢いもかなりあったのでレッドカードという判定以外ありえない。
なお、このシーンではカード提示後に今村主審がかなり激しい口調で小塚に対応している様子が映っていた。途中出場で意気込む部分はあったのかもしれないが、やる気が空回りしてのラフプレーはいただけない。今村主審としては自らのほうにボールが寄ってきてしまう難しい状況だったが、ステップをうまく踏みながら接触を正しく見極めた。
G大阪 vs 鹿島
(主審:中村太 副審1:三原純 VAR:福島孝一郎)
後半開始早々の47分、鈴木優磨がゴールネットを揺らすもオフサイド判定。VARチェックにはかなり時間がかかったが、結局は当初判定通りにオフサイドでゴールは認めず…というジャッジになった。
今回は、樋口がフリーキックを蹴った時点、次に常本がクロス(シュートかも?)を供給した時点、そしてガンバ大阪の選手(半田)がボールに触れた時点という3点がジャッジのポイントになる。
前者2点(FKを蹴った時点、クロスを蹴った時点)のオフサイドはラインの確認のみなので「ファクト」のみで判定できる。一方で、「ガンバ大阪の選手(半田)がボールに触ったか」はファクトとして判定できるが、それが「意図的なプレーかディフレクトか」という主観的な判断も必要になってくる。
今回の場合は選手が入り乱れる中で体勢を崩しながら足を出した結果であり、意図的なプレーではないと判断するのが妥当で、これによりオフサイドがナシにはならない…という判断でよいだろう。よって、FK時点とクロス供給時点のそれぞれの段階でのオフサイドの有無を見ていき、常本がクロスを送った時点で鈴木優磨が僅かにオフサイドであったことを確認してチェック完了となったと考えられる。
VARチェックには約3分の時間を要したが、オフサイドジャッジのポイントが複数あり、審判泣かせ、VAR泣かせの事象だ。チェックに時間がかかったことは致し方ないし、むしろ際どいラインジャッジを的確に行った三原副審は称賛されて然るべきだろう。
札幌 vs C大阪
(主審:谷本涼 副審2:岩田浩義 VAR:小屋幸栄)
41分、敵陣ゴール前でのボール奪取からカピシャーバがネットを揺らすもオフサイド判定。判定自体は疑いの余地がないが、この場面では岩田副審がフラッグを上げるも、谷本主審はシュートがゴールに入るまでプレーを続けさせた。VAR適用の試合ではオフサイドディレイを行うのが鉄則なので、ボール・プレーがゴール方向に向かっている場合にはいったんプレーを続けさせるのが鉄則だ。
岩田副審としては反射的にフラッグを上げてしまったと思われるが、プレーの可能性を考慮して笛を吹かずに続けさせた谷本主審の好判断であった。また、フラッグアップのタイミングはさておき、敵陣でのボール奪取という難しい局面で正確なラインジャッジを下した岩田副審の見極め自体も十分に称賛に値するであろう。
各試合の講評
クラモフスキー体制は
最高の滑り出し。
正念場は酷暑の夏か。
FC東京 vs 名古屋
アルベル前監督を解任しクラモフスキーが新監督に就任したFC東京。初陣となった今節は、ユンカー加入でカウンタースタイルが成熟の域に達したグランパスをホームに迎えたが、結果としては快勝。新体制の船出としてはこの上ないスタートとなった。
スタートの布陣はアルベル時代と変わらず4-3-3だが、中盤が「アンカー+インサイドハーフ2枚」が多かったアルベル時代と比較すると、「ボランチ2枚+アタッカー」を並べた点でやや前掛かりと言える。2列目にアタッカータイプを3枚並べたうえで、ボランチにも攻撃色の強い松木と安部を置いた点で、かなり攻撃的なスタメン選択であると言えるだろう。
この攻撃的なスタイルは、今節においてはポジティブに働いた。被カウンターのリスクが当然高まるが、敵陣でのプレスでカウンターの起点自体を潰せていたので大きな問題にはならず。エンリケ・トレヴィザンも森重も前向きのプレー(インターセプトや空中戦など)を得意とするタイプなので、その特長を活かす意味でも妥当な戦術選択だと言える。
攻撃面に目を向けると、ゴール前の厚みが増した点が大きい。ディエゴ・オリヴェイラはサイドに流れて崩しに関与することも多いが、アルベル時代は彼の代わりにゴール前に入る選手がおらず、チャンスは作れどゴール前での迫力を欠くシーンも多かった。今節では、トップ下に入った渡邊凌磨がゴール前に顔を出す場面が目立ち、クロスに対しても複数の選手が飛び込めていた。
初陣の出来としてはほぼ満点と言ってもよいが、監督交代によるカンフル効果は大いにあるので、真価が問われるのはこれからだ。むしろ、クラモフスキー監督が過去率いたチームでは、結果が出なくなったときに挽回できずに泥沼化…ということが多い。運動量が求められるサッカースタイルでもあるので、夏場に選手の消耗が激しくなってきたところが正念場になりそうだ。
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