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ラフプレーによる懲戒とタクティカルファウルによる懲戒の違いとは?(女子W杯-GL第1節②)

女子ワールドカップ2023のグループステージ第1節。注目の判定をピックアップし、簡単に講評する。

Referee Topics

アメリカ vs ベトナム

Referee:

Bouchra Karboubi (Morocco)

Assistant referees:

Fatiha Jermoumi (Morocco)

Soukaina Hamdi (Morocco)

Video Assistant:

Juan Martínez Munuera (Spain)

39分、エリア内でドリブルで仕掛けたアメリカ⑳に対しベトナム⑤がスライディングタックル。当初はノーファウルの判定だったがVARが介入し、OFR(オン・フィールド・レビュー)の結果アメリカにPKが与えられた。

まず事象をどう見るか…だが、個人的にはノーファウルでもよかったように感じた。ベトナム⑤が後手を踏んだ対応になっているのは確かだが、アメリカ⑳はベトナム⑤の足を「晒して」おり、プレーを続けることよりもファウルをもらうことを選んだように見えてしまった…というのが率直な印象だ。

上記は個人的な見解なので、つづいては判定プロセスについて考えてみよう。主審の判断が「接触はあったがノーファウル」だったとすれば、それは明白な間違いとは言えないのでVARの介入はなかったはずだ。この事象でVARが介入できるとすれば、主審が「ベトナム⑤はボールに触れている」と判断していた場合のみだろう。ベトナム⑤はボールに触れていないので、その点は「明白な間違い」として介入が正当化される。

当初判定はゴールキックだったので、当初の主審および副審の判断としては「ベトナム⑤がボールに触り、そのあとにアメリカ⑳に当たってゴールラインを割った」ように見えたのだろう。接触はかなり微細で、見極めの難度は非常に高かった。努力の余地があったとすれば、主審はドリブルでの仕掛けが始まった時点で素早く回り込んで事象に近寄る…くらいはできたかもしれないが、それをしたからといって見極めきれたかどうかはかなり怪しい。

なお、45+7分には、アメリカのゴールがオフサイドで取り消されるも、VARのOR(オンリー・レビュー)でゴールが認められた。とはいえ、非常に際どいラインジャッジであり、副審が責められるレベルのものではない。

ザンビア vs 日本

Referee:

Tess Olofsson (Sweden)

Assistant referees:

Lucie Ratajová (Czech Republic)

Polyxeni Irodotou (Cyprus)

Video Assistant:

Massimiliano Irrati (Italy)

この試合ではVARが計3回介入。いずれもオフサイドに関するものであり、副審のラインジャッジという点は大きな課題が残る一戦となった。

1回目の介入は23分で、2回目の介入は50分。いずれもオフサイドによるゴール取り消しで、ファクトに基づく判定なのでOR(オンリー・レビュー)でのジャッジ変更となった。これらの判定は単純であり、異論の余地はない。

3回目の介入は52分。日本⑮がザンビアGKに倒されてPKを獲得したものの、その前にオフサイドがありPKが取り消しとなった。ここで注目すべきはPKは取り消しになった一方で、GKへの警告は取り消されなかったことだ。いわゆるSPA(チャンス阻止)の警告であればオフサイドにより警告も取り消しとなるが、ラフプレーによる警告であれば取り消しにはならない。

※ざっくり説明すると、ラフプレーは相手の安全を脅かす行為自体が警告・退場の対象になる。一方で、SPAなどのタクティカルファウルは行為単体ではなく「状況」(相手のチャンスになる等)がセットで警告・退場の対象となる。よって、その状況が生じえない(今回の場合は、その前にオフサイドがあった)ことが確認されれば、懲戒罰は取り消しとなる。

よって、今回のイエローカードはラフプレーによるものであったと考えられる。状況としてはSPAによる警告もありえたが、勢いをもって相手に突っ込んでいき「衝突」した点を考慮すると、ラフプレーでの警告という判断には賛同できる。

90+7分には、ザンビアGKが再びエリア内で日本⑨を倒してしまいPK判定に。ここでも警告が提示され、前半に「取り消されなかった」警告と合わせて退場処分となった。なお、いずれのシーンも、飛び出したもののボールに触れずフォワードに接触…という形なので、ファウルであることは明白で議論の余地はほとんどないだろう。

イングランド vs ハイチ

Referee:

Emikar Calderas Barrera (Venezuela)

Assistant referees:

Migdalia Rodríguez Chirino (Venezuela)

Mary Blanco Bolívar (Colombia)

Video Assistant:

Juan Soto (Venezuela)

15分、イングランドの攻撃シーンにVARが介入。まずはイングランド⑱とハイチ⑲の接触を確認しファウルと判断したうえで、その前のイングランド㉓とハイチ④の接触を確認しこちらもファウルとし、結果的にハイチの直接フリーキックでの再開となった。

まず、イングランド⑱とハイチ⑲の接触は、ハイチ⑲の足が⑱にヒットしており、警告に値するラフプレーと判断するのが妥当だろう。一方で、イングランド㉓とハイチ④の接触は、肩に腕がかかっており足も接触があるとはいえ、④がそこまで大きな影響を受けているようには思えず、ノーファウルでもよかったように思う。よって個人的には、イングランドにPKを与えるのが妥当だったと考える。

VARの介入手順としては、まずはイングランド⑱とハイチ⑲の接触を「Possible Penalty」として確認する。この事象が「ファウル=PK」と主審が判断した場合には、それに絡んだプレーであるイングランド㉓とハイチ④の接触もVARチェックの対象となる。二度手間に思えるかもしれないが、VARが介入できるのは「PKかどうか」のところなので、それに即したチェック手順となる。(逆に言えば、もし前者がノーファウルという判断になれば、後者のOFRはせずにゴールキックでプレー再開となる)

なお、PKを与えなかったにもかかわらずハイチ⑲に警告を提示したのは、前述のザンビアGKに対するものと同様の考え方だ。PKという状況に対する措置は取り消しになったものの、ラフプレーをしたという事実は残るのでイエローカードは提示されて然るべきだ。

25分、コーナーキックの場面でVARが介入。OFRにより、ハイチ⑦のハンドがあったことを確認し、イングランドにPKが与えられた。ハイチ⑦の腕は高く上がっており、そこにある正当性も皆無。手への接触は僅かだったが映像であれば手に当たっていることが比較的明瞭に確認できる。ボールの軌道は大きく変わっていないので肉眼での見極めはかなり難しく、「VARがあってよかった」というシーンだろう。



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